決意
夕刻になり
お互いテーブルに向かい合うように座って食事をしていた。野菜を中心にパンとスープと言うヘルシーなメニューだったけれど味付けはとても美味。
リンは食事の前にお祈りをしていたが、俺の知るどの宗教のお祈りとも違うものだった。
「それで、気を失う直前までの記憶では何をしていたの?」
「悪の根源オオボスを倒して、それから」
そう言いかけたところで彼女は突然目を大きく見開き、身を乗り出して勢い良く顔を近づけ食いぎみにこう言い放った
「あなたもしかして、神様なの!?」
「え?」
余りにも突拍子もない発言に思わず固まってしまった。いや、しかしいきなり神様なのかと訊かれれば驚きのあまり大多数の人は固まってしまえのではないだろうか。
「いやいや、俺は神様なんてたいそうな者じゃないよ」
「でも今、悪を倒したって」
「そうだけど」
「じゃあ、やっぱり神様じゃない!」
「それじゃあまるで悪を倒せるのは神様だけみたいじゃないか」
「え、だってそうでしょ?」
「え?」
「え?」
なんだこの、会話。
まるで、噛み合ってない。
いや、まてよ、この国では悪を倒す者を神とたたえる宗教とかそう言ったものなのかもしれない。
等と考えて冷静になると、お互いの顔の距離が近いことに気が付いたのかリンは顔を赤くして即座に定位置に戻った。
「一応、俺は人間だし神様でも無いんだけど、悪と戦う為の力は持ってるんだ、この国では違うのかい?」
「ただの人間が悪と戦う……ですって?」
リンの顔色が少し曇った。
何か不味いことを言ってしまったのだろうか
「本気で言ってるの?」
「今の発言は不味かったかな」
「それは……もし本当なら……、あ、でも、そうよね、貴方の国の悪と私の国の悪は違うかもしれないし、ごめんね。今の発言は忘れて」
そう言って申し訳なさそうに顔の前で腕を振るリン……
と、その時
家の外からドーンッ!と言う爆発音と共に大きな地響きが聞こえた。
「今のは!?」
身体に染み付いた経験が頭を戦闘モードへ切り替える。
「うそっ!結界が破られた!?そんなことって!」
彼女は絶望に染まった顔で立慌て立ち上がると、窓の外を睨み付け、意を決したように駆け出した。勢い良く部屋を出て行ったが彼女は1秒後にまた戻ってきて
「いい?危ないから絶対に外に出たらだめよ!」
と、一言告げ再び外へ出ていった。
こんな時にまで俺の心配とは……何処までお人好しなんだろう
立ち上がり窓から外の様子を伺う。
さっきの音は間違いなく爆発音だった。
彼女は結界が破られたとも言っていた。
目が覚めてまだ数時間も経って居ない上に分からない事ばかりだけれど、きっと彼女は爆発音を辿って行ったのだろう。
ブレイブギアに目を向ける。
「もう一度俺に力をかしてくれるか?」
そうして、リンの後を追い俺は駆け出した。
ブレイブギア:火鳥勇一がブレイブに変身するためのブレスレット。宇宙と科学と叡智の結晶。