強奪犯
○
6月10日
天井、高くに設けられた天窓からは
この時期には珍しい程によく晴れた
太陽の光が零れんばかりに
チャペルへと差し込んでいた。
「新郎、隆は新婦、亜輝を如何なる時も愛し、守り、支え合う事を誓いますか?」
「はい。誓います。」
「それでは、新婦、亜輝は新郎、隆と共に如何なる時も愛し、支え合う事を誓いますか?」
「はい。誓います。」
「それでは、、」
神父が2人の愛を確かめ合い
誓いのキスをと言いかけた瞬間
「誓いません!」
突然、静まり返ったチャペルの中に
銃声のようにある男の声が木霊した。
○
3月10日
「いや、待て待てそんなに上手く行くものなのか?そもそも?」
「いや、もうここからは勢いだろ。」
「勢いって、」
男達のよく集まるバー
カタラーナでハルトは
隆の発案した作戦に首を
傾げていた。
「そもそも、隆が別に結婚したくもない亜輝と婚約を結んだ所からもう間違いなんだろ?」
「いや、待て待てハルト
お前は亜輝と結婚したいんだろ?
そんでもって俺は亜輝とは結婚したくない。これで俺らはウィンウィンの関係なんじゃないの?」
隆は泡の消えたビールを飲み干しながらそうハルトに訴えた。
「まぁ、そうだけど、
そもそも結婚式で連れ去る理由ってあるの?」
「ハルトは分かってないなぁ
結婚式の方がなんかドラマっぼくない?」
「やっぱりそんな理由かよ。」
ハルトは大きなため息をついた。
「いや、でもよく思いついたよな。
隆は結婚したくないし
ハルトは亜輝と結婚したい
だから、式で奪うなんて。」
全く自分には関係ない匠は
ケラケラ笑いながら煙草を蒸した。
「とりあえず、挙式まではあと今日からちょうど3ヵ月ある。
それまでに俺らはお互いに亜輝を奪う。奪われる。側の準備を進める訳だ。」
「それは、わかってるよ。」
※
この本を既読して下さった
頭の良い皆様なら
とうにお解りであろう
この物語は
新婦、亜輝。と
絶対に結婚したくない男
隆
亜輝と結婚したい男
ハルトが
お互いの未来の為に
結婚式当日に花嫁を強奪するという
なんともわがままな
男達の物語なのです。