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千貌の華 forbidden blood  作者: 猫文字 隼人
第一章 血染めの華
9/33

7

 夕飯を作りながら放課後に聞かされた話を何度も反芻していた。

「痛ッ」

 ぼんやりしていた為指先を少しだけ包丁で切ってしまった。仕方なく調理を中断し、手当てする。


 動物を殺す。それも黒木が。正直言ってそんなバカなと思う。

 けれどだからと言って、クラスメイト達が嘘を言っているようにも見えなかった。特に委員長のあの怯えぶりは見る限りでは本物だった。そしてその他クラスメイト達の反応からもそれに近しいものを感じた。

 当初はただのいじめだと思って関わりを持つ事を拒否していたが、あの時言われた呪われるというのはそういう意味だったのか。

 勿論信じたわけではないが、考えてみる。クラスメイトの言うように本当に黒木が動物を殺していたとする。あくまでも仮に、だ。

 ならば、何故そんなことをするんだろう。この手の話にありがちな猟奇的な物を黒木から感じる事は今のところ無い。

 そこまで考えてふっと脳裏をよぎる秀才くんの言葉。


『あいつが吸血鬼だとしたら話が繋がる』


 確かにそう言っていた。動物虐殺によって奪われたものが、『血』であったなら。血だけ抜き取り、肉を転がしておけば一見ただの惨殺死体にしか見えないだろう。血が目的であったとしてもその意図は隠すことが出来る。

 そして動物が殺される前に起こっていた吸血鬼事件と呼ばれた傷害事件。

 確かに話としては繋がるのは否めない。

 ふと以前黒木と交わした会話が脳裏をよぎる。


『あんたん家いってもいい?』

『吸血鬼は家に招かれないと家に入れない』


 まさかな、と思う。あれは冗談だったのだから。ドラキュラ伯爵に吸血鬼カーミラ。そんなものはお話の中の存在だ。

 事件に関したって暴行されれば流血し、結果的には被害者の身体から血液が減っていてもおかしくは無い。週刊誌が面白おかしく誇張しただけに過ぎないはずだ。

 黒木は俺の、ここに来て初めての友達だ。悪い奴でもないと思っている。けれど俺はそれ以上黒木の事を何も知らない。

 どくどくと心臓が動きを早める。さすがに吸血鬼は話が飛躍しすぎだ。

 けれど、ならどうして黒木は動物の惨殺死体の発見現場で、しかも血まみれの状態で目撃されたのだろう。そして黒木はそういった噂を否定していないとも言う。どういうことだ。全くわけが解らない。


「なんだってんだよ」

 もやもやとした気持ちの中で味のしない食事を取り、布団に寝転がる。

 ばかばかしいと思いつつも一度気になり始めるとその晩はなかなか眠れなかった。

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