表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

結城茜の理由

登場人物

結城茜(ユウキアカネ) 男 15歳

本人は女の子のような名前に少しだけ嫌悪感がある。

見た目も女子のようなのでよく、絡まれる。


結城葵(ユウキアオイ) 茜の母親


結城涼介(ユウキリョウスケ) 茜の父


車椅子のお爺さん


サングラスの人

ずっとモテない人生だった

告白する勇気も無く

勿論、告白される魅力も無く

今まで生きてきた中で異性とまともに話せたのは多分、小学生が最後

「おはようございますわ 『(アカネ)姫』」

「良い天気ですわね『(アカネ)姫様』」

「おはよう『(アカネ)』姫!」

「今日は寝癖ついてないんだな 『(アカネ)』姫様」

そんな俺が『お姫様』と全校生徒や教師に呼ばれるようになったのには理由がある。


それは…1週間前に遡る


ーー1週間前ーー


結城(ユウキ)という苗字の普通の家だった。

「まだ寝てるの?茜は」

パート勤務の母『(アオイ)

「いいんじゃないか?学校は夏休みだろう?」

会社勤務の父『涼介(リョウスケ)

そんな普通の家庭で生まれ育った

"普通の俺"

金持ちでもなく、かと言って貧乏でも無い

両親は駆け落ちしてお互いに家を出て行った。その事に関して俺は一切興味がなく 聞く必要はないとさえ思っていた。

「普通が1番だからね〜」

俺は夏休みの中間を満喫していた

課題は残っていたが、遊びに誘ってくれる友達もましてやデートをする彼女もいないため

二度寝と表してベットの中で動いていた。

「あかねー!そろそろ起きなさいー!」

母が自分の名前を呼んでいる

早く起きろと急かしてくる。

ただ…最近はそう言うだけで起こしには来ない。

昔はよく布団を剥がされ無理やり起こされた。

もう…そういう歳でも無いだろうと言うことか

それはそれで俺にとっては好都合で

ベットの中でまだ残る温もりを感じながら

また目を閉じる


俺は母が痺れを切らして起こしに来るギリギリの時間帯まで布団にくるまる

物音がすると母が自分の部屋の扉を開ける合図で、母が開ける前に静かに扉を開けるのが

俺の朝の始まり

母より先にドアノブを握り…右に傾ける

「おはよ」

「あぁ…おはよう 起きてるなら、すぐこっちに来ればいいのに…めんどくさい子ね」

これが結城家の朝の風景

「父さん、おはよ」

「おはよう、茜。よく眠れたかい?」

「うん」

何気ない会話をして席に着く

テーブルに並べられた料理を口に運ぶ

「いただきます」

「それ…食べる前に言ってよね」

「忘れてた」

笑い声がこだまする。お世辞にも裕福な家庭とは言えないが俺は父と母が笑ってくれさえすれば充分幸せだった。


ただ…そんな幸せな日常は突然終わりを告げた。


「茜!母さんと父さんちょっと出かけてくるから留守番頼んだわよ」

今にも悔やんでいる。


「分かった。…早く帰ってきてね」

俺は何故あの時2人を、引き留めなかったのか…


「なるべく早く帰ってくるよ」

何故あの時早く帰ってきてと言ったのか


「うん、行ってらっしゃい!気をつけてね」

中途半端な甘えは人を不幸にする

元々、両親にあまり甘えたことがない俺が

不器用にもハヤクカエッテキテなんて

…言うんじゃなかった


夏休みの最後の日に両親は交通事故にあってしまった。


「茜君…どうするのかしらね」

「2人ともいっぺんに亡くされて…」

両親の小さな葬式で知らないおばさん達が俺のことを見てひそひそと話していたのを耳にした。

「まだ中学生だから…孤児院かしら?」

「大変ねぇ」

どうせ『大変』なんて微塵も思っていないだろうに…

孤児院なんか反吐が出る。

あんな所に行くなら独りで生きていく


そう決意した時、ふと目の前が暗くなった

「茜君…だね?」

見上げると車椅子に乗った70代くらいの男性が黒い人を後ろにつけていた

「…結城茜君?」

今度は車椅子に乗った老人ではなく黒いサングラスのかけた男が話しかけてきた。お付の人と思われる男性はぴったりと老人の後ろについていた。まるで絵に描いたような『お金持ち』のイメージにそっくりで

「そうですけど」

俺はぶっきらぼうに告げる。

すると老人は目の色を変えて、キラキラとした瞳で俺を見つめた…

「そうかそうか…君が茜君かぁ…こりゃまた…大きくなったねぇ〜」

老人はしわくちゃな両手で俺の頭をかき回した。

「…ちょっいきなり何なんですか?」

老人は我に帰ってこう告げる。

「ここじゃアレだから、わしの車で話をせんか?」

両親との別れを告げて俺は老人のあとをついて行った。


老人の先に見えたのは黒くて長い車、所謂『リムジン』という奴だった。

「…本物の金持ちか」

「ははっ!金持ちか!」

俺は思わず、口を塞ぐ。しまった…心の声がもれてしまっていた。

「すみません。」

俺はすぐに謝った。すると老人は慣れている様子で俺の言葉を静かに認めた

「なに、気にすることは無い。さあ乗りたまえ」

黒いサングラスの男が目の前の扉を開けてくれた。するとそこには…車の中とは思えない空間で、まるで一つの家がそのまま車輪がついて動いているようだ。


車の中に入って、奥のソファに座った。

テレビは勿論のことソファにテーブル、更には冷蔵庫にコンロ台まであった。

そんな豪華すぎる車は、漫画やドラマの世界に存在していると思っていた俺にとっては衝撃的なことである。

物珍しそうにあたりを見回していると

老人がゆっくりと俺に話しかけてきた。


「お前をわしの家で引きとりたいんじゃ」


はっきりと聞こえた『引きとりたい』という言葉に反応した。


「えっ!?ひっ…引きとる?」

「ああ…そのままの言葉の意味じゃよ?」

間一髪入れずに老人は答えた。俺は足りない頭で考えたが、何をどう説明しても老人が何故俺を助けたいのか理由が1つも見つからない。

「なんで…俺を?」

聞いてみた。

何故こんな俺を引きとりたいのか

何故俺を助けてくれるのか

その問に答えたのは今まで一言も発しなかった黒いサングラスの男であった。

「私が説明致します。」

目の前のモニターに映ったのは、どこか見たことのある懐かしい雰囲気の写真であった。

特定の女性を映したその写真は1枚とは言わずに数枚…数百枚と映し出された。


暫くして、彼女が高校入学の時の写真になった時

「…『御伽(オトギ)』高校?」


最後の1枚であろう大学卒業の写真には

女性の隣にある男性が映っていた。

じっくり見ようとした瞬間に黒いサングラスの男によってモニターは消去されてしまった。

「…なっなんで?」

「この女性が誰かお分かりになりましたね?」

黒い画面に自分の情けない顔が反射する。

その問に答えようとするが、出てくるのは嗚咽だけで自分で聞いてて嫌悪を感じた。

「あっ…あ、誰って…」


だって…モニターに映っていたのは…


紛れもなく『母』だったから


「…俺の母です。」

そう言うと老人と黒いサングラスの男は満足そうに笑った。

「正解です」

黒いサングラスの男が俺に向かって拍手した

乾いたその音は車内に響き渡った。

「わしの娘の葵、その息子のお前。つまりお前はわしの孫になる訳じゃ」

当たり前のことだけど、淡々と事実を語られて気後れしてしまった。

「本題にはいるのじゃが、お前をわしのところで引きとりたい…血縁じゃからな」

「…」

身寄りもないと思っていたのに、こんな形で自分の祖父に会うとは思いもよらなかった。

孤児院に行かなくて済む…皆と同じ学校生活を過ごせると思うと不謹慎だが笑みがこぼれそうになる。

「ただし、一つだけお願いがあるんじゃ…」

老人はゆっくりと語り出した。

「わしの娘、葵が通っていた学校に行って欲しいんじゃ」

「えっと…御伽高校でしたよね?」

「うむ」

「それだけで良いなら、俺行きます。」

「そう言ってくれると嬉しい。ただ、普通に通うのではなくてな…葵が叶えたかった夢をお前に託したいのじゃ」

「…夢?」


それが男の俺が『お姫様』に選ばれた理由

叶わなかった母の夢を背負うこと


「茜、御伽高校で(フュルスティン)になるのじゃ」


それは、亡き母が叶えたかった夢


「…フュ、フュル?…えっ!?」


なんて言ったのか 年老いた男の口からカタカナが出るなんて思わないだろう。

俺は、そこから語られた言葉に驚きを隠すことが出来なかった…


「…それはな」


最後まで読んで頂きありがとうございます(^ω^)

拙い文章ですが、ゆっくり更新しようかと思います。


よろしければ、コメントや評価をお願いします<(_ _)>


by.東雲

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ