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report.8

「と、言うことで。今から実践になります! 状況はラクロスさんが言った通りですので! 出来る限り、たくさんの人を誘導させてください!」


「了解っ!」


「質問なんだけどさ。魔獣がどれだけいるかはわかんないけど……取りあえず、この前の二人組で応対したほうがいいんじゃないの」


「おおっ! クリストいいこと言うじゃんか! そうだよな、流石に魔獣が多すぎたら一人じゃきついしな」


「そういうつもりじゃ……ま、いいか。反論すんの面倒だし」


 クリストの提案。悪くはないし、むしろそっちの方がいい。


 第143期の中にどれだけ魔獣と対峙したことのある人間が居るのかは分からないが、少なくとも一人でパニックになるよりはずっといい。


「うん。じゃあ、それ採用! 昨日のペア同士で組んで、避難を優先させて! 魔獣の方は、先輩騎士達が何とかしてはくれると思うけど……それでも、撃ち漏らしがあり、尚且つそれに遭遇した場合はなんとかして倒す事!」


「「「うわあ……結構雑な纏め方……」」」


「いいから早く行って!!」


























「シルヴィア様! あ、あの……私は、こっちでいいんですか……?」


「うん。貴女は……ユキさんはこっちでお願いします。私達の方は襲撃者を……これを起こした張本人を叩きに行くので」


「そ、そうなんですか……あ、あと、その、さん付けはしないでください。むしろ、その、呼び捨てで呼ばれた方がいいっていうか……」


「あ、う、うん……」


 町中を全速で駆けながら、シルヴィアはユキに今回の作戦の重要な所を語る。


 シルヴィアは、若干ユキにペースを乱されながら、彼女に驚愕を禁じ得ない。


 だって、今シルヴィアは本気に近い速度で走っている。なのに、彼女の方は息すら乱れていない。


 素晴らしい逸材だとは感じていたが、ここまでだとは思わなかった。


 彼女の全速に付いてこられるのは騎士の中でも上位──五人将などに限られる。


 つまり、ユキは既にそれに近い実力を持っていると言っても過言では──。


(過言では、ないよね……?)


 若干自信なさげにそう思うのであった。



「そんで、どうするよ。これ」


 そして143期に偶然にも入ってしまった彼らは、目の前に待機している魔獣達を見据え、冷や汗を流していた。


 中にはクリストと言った面々も紛れており、まさにフルメンバーだ。


「でもあんなかに助けを待ってる人が居るんだよな……なら、特攻だろ!」


「お前は黙ってろし」


 よく訳の分からない理由で特攻しようとする少年──ハイネスの髪をクリストが乱暴に引っ張り特攻を許さない。


「それでどうするかねえ……なあ、クリストさんよ。なんか策とか思いつかないんか?」


「お前が考えろし。お前のさっきの魔法だったらなんとかなるんじゃないのか」


「おいおい。マテマテ。流石の俺の魔法でもあんだけを移動させんのはきついっての……俺のは、対象が二つまでって決まってるし、尚且つ距離は一メートルが限度なんだって」


 そうやって熱弁するのは、特に特徴のない男性──フライクだ。


 第143期の中で、影が薄いとされている人間の筆頭格である。


 使える魔法は転移魔法という立派な魔法なのに、使える範囲が決まっているというあまり役に立たない人。


「なんか俺の説明が雑な気がすんが……特に間違ってねえからなんも言わねえ」


「はっ。お前ら。こんだけいて策の一つも出ねえのかよ。お前らの脳みそん中はくそか?」


「ちょ、ちょっと。暴言は控えた方がいいって。今は協力して事に当たった方が……」


「それはお前のような凡人……ラスがやることだろ。天才の俺には必要ないね」


「う……」


ラスと言われた少年がいきなり場を乱そうとした男──シンリへと注意をするも、逆に返され言葉に詰まる。


 シンリ──第143期の中でも上位に位置する実力者だ。実力はほぼ全員をも上回るものであり、自ら天才と言うことを憚らない。


 ただ一つ、残念なことと言えば。


 その左目に、眼帯を付けていることか。本人はそれが一番かっこいいと思っているのか、それとも本当に傷があって見えないのかは誰にも分からない。


「お? あれか、今こそお前のその左目の封印を解くときですか……!」


「黙っていろ、名も知らぬ人間風情。自分に出来ぬことを人にやらせようと言うのか」


「わー、ごめんなさい!? 天才様、どうかご機嫌を損ねないでください!? 貴方が戦わねば誰が戦うと言うのです……」


 悪乗りして、シンリを戦場へと送り出そうとしたフライクだったが、あえなく撃沈。この状況で最高戦力が抜けるのはまずいことだと彼も思っているのだろう。


 ゆえに、誠心誠意を尽くした土下座によって何とか事なきを得る。


「み、みんな……いい加減話を進めようよ……」


「お前、大変だな!」


 目の前でバラバラっぷりを発揮する第143期の面々に、ラスは諫めようと口を挟み、そんな苦労が透けて見える彼に、掛け値なしの称賛をハイネスは送る。


「とまあ、悪ふざけはこれくらいにして。そんじゃ、シンリさんよ。俺があんなかに送るから、適当に暴れてきえくんねえかな?」


「ほう。──いいだろう。今こそ、俺の本領を発揮するときだからな」


「はいはい、頼みますよっと。──そんで、ハイネスは……適当に」


「おう!」


「そんで、クリストと俺、ラスは避難を誘導させると。よっしゃ、この作戦で行こう。どうせ、現場での判断なんざ俺達に一任されてんだ。どれだけ魔獣を殺そうとなんも咎められやしねえだろ」


「フライクって、こういう時はすごいよね……ちゃんと周り見ててさ」


 豹変ぶりを周りに見せつけるフライクを羨ましがるラス。


 と言うのも、彼にはないのだ。独自性というものが。


 何をやらせてもそこそこは出来る。だが、天才の域には達しない。あくまで、凡人としての範囲で出来るのだ。


 彼にないものを持っている143期。ラスと言う青年からすれば、そこは別次元にすら思えるだろう。


「──お、おう……そこまでの尊敬をくれるなんて思わなかったぜ……ま、取りあえず、やるだけやってやろうぜ」


 いつもならバラバラで、個性が強すぎて面倒になる面々。


 だが、こういう時程頼りになる存在は他にはいない。


 第143期。歴代の騎士の中で、正式な騎士に慣れずにその命を失くした、ある意味で珍しい騎士。


 その癖は強く、シルヴィアにしか御することの出来ない災厄の世代。


 この時に、その真価は発揮される。

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