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report.5

──生まれた時から化け物だった。


 誰よりも天才で、おおよそ人間なんてものの領域を遥かに超えるぐらいに。


 誰よりも才能に満ち溢れ、それゆえに誰からも畏怖を抱かれ孤独だった。


 ──どうして、こんな道しか選べなかったのだろう。


 いつだって、そんな風に悲観する。


 だって、彼女の最初の願いは。ただ両親から認められたかっただけだと言うのに。


 それだけのために、一生懸命に魔法を覚え、両親を驚かすためだけに独流で剣術を仕込み、一人で魔獣を刈った。


 ただ喜んで欲しかった。


 だけど、何時しかそれは──。


「私は、何を……」


 桜色の髪──ともすれば桃色の髪の少女であり、自分達の上司に当たる『英雄』、シルヴィアの姿を見つめながら、一人の少女はそう呟くのだった。




















 そして、国を代表する三人が地下に集合していた頃。


 シルヴィアは与えられた自室にて、ただ剣を振っていた。


 ──無論、それが許されているわけではない。王城内において剣を振ることを許されているのは限られている。


 例えば、新米騎士をしごく場所──中庭や訓練場だったりと決まっているのだ。


 だが、そうでもしないと昼間のストレスなどが吹き飛ばない。


 なんというか、色々と自由奔放すぎるのだ。シルヴィアも正式な手順を踏んで騎士になったわけではないので何も言えないのだが──。


 それにしたってひど過ぎる。これではもう、組織ではなく個人だ。絶大なる個を孕んだ危険な集団。統率など有りはせず、ただただ自由気ままに振舞う最悪な集団しかない。


 だからこそ、彼女が最初に教えるべきことは何か。その圧倒的な才を伸ばす事か、いやそこではない。


 シルヴィアがまず彼らに伝えるべきことは、協調性だ。


「方向は決まった……あとは──どうやって、それを伸ばそうかなあ?」


 結局その結論に辿り着き、剣を床に放り投げ悩むのだった。


















 そして、夜が明け。


 最初の訓練の日がやってきた。


 例年ならば彼らの実力を測るために、騎士同士で戦わせるのだが今回はそこに少しだけアレンジを加える。


 協調性の欠片もない──ただし、シルヴィアのお願いに関しては効力は発揮する──彼らに、それを叩き込むために。


 まずは──共闘をしてもらうのだ。


「──というわけなので、出来るだけ初対面の人と組んでください」


「質問いいですか!?」


「ひゃい!?」


 いきなり大声を出され、声がひっくり返るシルヴィア。そんな少女のかわいらしい姿を見て頬を緩ませる。──ちなみにシルヴィアの顔は真っ赤っかだ。


 そして、後ろで見ていたナルシアは。


「なんだ、案外慕われてるじゃない」


 などと見当違いの事を口にするのだった。


 

 ──いずれ物語は一つに収束する。


 それは決着に相応しき場所にて終わりを迎えるものだ。


 だから、これはまだその時などではない。


 これは前哨であり、余興。一人の狂人が気まぐれに仕掛けた最大の罠。


 幾重にも重なったその糸。その片鱗は未だ姿を見せず、彼らは束の間の平穏を信じている。


 だが、思い出すべきだった。仮初の平和など、いつ崩れてもおかしくはないのだと。


 彼らに迫るまず一つ目の試練。


 それはすぐ近くにまで迫ってきているのだった。

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