report.2
「ラクロスさん……一体、何があったんですか?」
先ほどの庭から移動し、シルヴィアは目の前に立つ半裸の男性──ラクロスへと尋ねる。
間違いなく騎士達の中でも上位に位置するはずの彼がなぜ、こんなにも疲れているのかを聞き出さねばなるまい。
「いや、まあ……なんというか……お前が来るまで私が面倒を見ようと思い、行ったんだが……これまたどいつもこいつも曲者揃いでな……」
「協調性の欠片も見れませんでしたからね……あの人たち」
シルヴィアが見た限りでは、思い思いの人生を過ごしているように思えた。あるいは単にそれが出来ない程の個を持っているとも取れるのだが。
シルヴィアが騎士になってから約3年だが、それまでに見習い騎士を何度も見てきた。
だが、今回の騎士達はそれらを軽く凌駕するほどだ。はっきり言って、シルヴィア如きに御せるとは思えない。
「とまあ、あいつらの面倒な所が垣間見えたところで……シルヴィア。騎士団長として、命ずるが……シルヴィア殿には今回彼らの教官役を頼みたいと思う」
いきなり騎士団長としての顔付きへと変貌し、シルヴィアへと命令を下す。本来であれば、シルヴィアも任務を断ることなどない。
あってはならない。だが、今回ばかりは──。
「あ、あの……ラクロスさん……私、今回辞退しても──」
「ま、待ってくれ! 頼む、後生だ……! お前以外に誰があんな奴らを御することが出来ると思ってる……ま、待て。誰もやりたがらないんだよ……」
今回ばかりはこなせるとは思えず、事態の旨を伝えようとするがラクロスは引き下がらない。
「そ、そういうのはラクロスさんとか五人将の方々に任せればいいではないですか……」
「私だって嫌なんだ、面倒なんだ。休日まであいつらと顔を合わせたくないんだ──!」
「ラクロスさん……キャラが……キャラは崩壊してます……!」
もはや騎士団長としての意地などごみ箱に捨て、臆面もなくシルヴィアに頼み込んでくるラクロス。だが、シルヴィアもそこは譲れない。
第一人づき合いが上手くないシルヴィアなどがあの場に入ったところで、何の意味があるというのか。笑いものにされる未来しか見えてこない。
「ぐ……シルヴィア。王の勅命を忘れたか?」
「う……それは、そうですけども……」
そもそもシルヴィアが王城へと立ち寄った理由。──王からの手紙だ。
つまりそれを反故にするということは王への不敬を意味するところで──。
「こんなところで権力を使って来るなんて……!」
「ふふ、ははははは! では、頼んだぞシルヴィア。明日から頑張ってくれい!」
「ラクロスさん──!」
どこか意地悪そうな、それでいて嬉しそうな顔を浮かべラクロスは近くの鎧を引ったくり部屋から軽やかな足取りで去っていく。
そして、部屋に一人残されたシルヴィアは──。
「はあ……どうしよ、明日から……」
どうすることも出来ない現状を眺め、嘆息するのだった。




