危ない……
「はい、これで大丈夫だよ」
アラン軍医が腕に突起物が当たって怪我したといって医務室に息をきらして駆け込んできた少年に手当てを施し微笑む。少年は「ありがとうございました。」とだけ言って付き添いに来ていた同じ小隊の少女と訓練に戻っていった。
翌日の医務室は時々士官学校生が怪我しただの、数日間でたまった汚い空気に耐えられなかった者でそこそこ混雑していた。
初日みたいにベットで寝るなんてしたら論外だと怒られてしまいそうだ。
私は凄く昨日の夜の出来事を知るものがいないか不安を抱えながらも怪我した士官学校生の手当てをしてあげる。
「ねぇ?ニック軍医いる?」
突如第十班の班長、菊地 葛が医務室に顔を出した。
「生憎、ニック軍医は御手洗いに言ってますよ。すごい真っ青な顔してましたから恐らく下痢でもしたんでしょうね」
同僚の看護兵の青年が菊地班長に告げる。
「あっそう。いやぁ多分第五小隊の部屋辺りから深夜にパソコンの電源がついてたみたいって私が寝てたときに電気のモニター監視してた奴に言われてさ、ニック軍医が何か作業してたのかなぁって少し気になったの。いないなら良いや」
ヤバイ……パソコンの電源ついてたのバレてた………
このままニック軍医が作業していたですまされることを私は煮えたぎる脈とドクドクと暴れだす心臓を抑えながらこの場を乗り切ろうとした。
菊地班長はこれ以上話をすること無く「邪魔したね」とだけ言ってこの場を去っていった。この後ニック軍医に遭遇しないか心配だが尾行するわけにはいかないので平然と仕事を続けていた。
バレてはいけない………バレて待つのは死だけ………
そう、スパイ行為はインターナショナル=フォースでは死刑相当の行為なのである。
ここの士官学校に入ってから今現在までかれこれ5年が経つが疑われることなど一時もなかった。だが菊地班長みたいに指摘されただけで私の心臓がこの様だ。
もう少し平静を保たなくては……
たまっているストレスを軽く息にのせて吐くと私は今日も軍医達の指示のもと手当ての補助やそろそろ疲労が目に見えてくる士官学校生達の体調管理に私と皆はせいをだしたのであった。
閲覧ありがとうございます。最近スパイについての本を図書館から借りて読んでます。スパイってわりと普通な人たちなんですね。
フィクションとかだと特殊能力とかあるイメージですが。
<登場人物紹介>
菊地 葛:第十班の班長で普段は機械などを整備している。
キャラクターデザイン:サバノミソニ様
そろそろ第一章終わるかな。章の設定してないだけで全部で四章くらいありますので。
ではまた次回。