大丈夫か……?
眠いなぁ………
翌日になったのかまだなのかあやふやな暗がりで目が覚めると何故かまわりには誰もいなかった。
寝坊かと急に心配になりそばにあった自分のセーラー服と白衣をわしづかんで着替えながら医務室に足を急がせた。
「班長!!班長!!しっかりしてください!!」
見ると前方から部下の落ち着かない声とともに第九班班長 秋風紫鶴教官が顔を真っ青にして部下に運ばていく。
「秋風教官が倒れるなんて……いったいどうされたんですか?」
落ち着かない声に共鳴するかのように私の声もいまいち落ち着きを失い彼らのもとに駆け寄った。
秋風教官は教務科という科の教官達と士官学校生、新人の兵士をまとめる第九班の班長だ。倒れる事なんて滅多にない人だから余計に大騒ぎするのである。
ニック小隊長は秋風教官の部下に秋風教官の部屋の状態を確認するように指示すると「神無君。」と手招きをした。
「おらぁ!ベッドで寝てるやつ!!さっさと片付けろ、病人いるんだから。」
ニック小隊長の本気モードになるときのあの目付きといい声といい、昨日のベロベロになっていた恥ずかしいニック小隊長の姿とは大違いだ。
私は秋風教官の脈を図ったり声をかけたりしながらニック小隊長の指示を受けてそれに合わせて動く。
脈拍数は正常……
「ニック小隊長!脈拍数は正常です!!」
ニック小隊長は秋風教官の部下から部屋の状況を聞いた第二小隊の青年軍医と話しをしていた。
近くの看護兵にニック小隊長をつれてきてもらい結果を報告する。するとニック小隊長は、
「教官の部屋は書類の山と電源がついたままのパソコンがあったらしい。多分遅くまで作業されてたのだろう。とりあえず、経過観察で、ポール君!」
「はっ!!」
すばやく歩み寄り敬礼する同僚の軍医、ポール=アンソニーはニック小隊長から様子を見ててくれと指示を受けるや敬礼してベッドの脇の椅子に腰掛けた。その優しげな姿に少し見とれるほどだった。
「いやぁ……それにしても朝からすごい対応だったねぇ……」
涼しげな顔で二、三枚のカルテを持って歩く金髪の青年が他人事のように振る舞っている。
「アッ……アラン軍医!!おはようございます!!」
ニック小隊長の声に反応して医務室にいた一同がアラン軍医に敬礼をした。
「アラン軍医、こんなときに医務室に来ないなんて何か別用でもあったのですか?」
彼と同じ小隊の彼より明らかに年上の男に問われたアラン軍医は
「いやぁ…アリアが少し苦しそうな顔をして寝てたものでね、心配だったから少しそばにいていただけだよ。」
とだけ言って救急箱を一箱取り出すと彼はなにも言わずに去っていった。
妹のアリア=ローレンス士官学校生の事が心配なのはわかるけど…
一同は肩を落とすと医務室内には睡魔に負けた軍医、看護兵達のイビキが合唱するかのようなとめるにもとめがたい空気に包まれたのだった。
閲覧ありがとうございます。プリ画像の方でも第一話の更新が完了しましたので第二話更新させていただきます。
<登場人物紹介>
・アラン=ローレンス:階級は少佐。軍医のなかではけっこう偉い方。妹のアリア士官学校生には甘いという噂がある。
キャラクターデザイン:空様
・アリア=ローレンス:士官学校生。アラン軍医の妹さん。
キャラクターデザイン:空様
・ポール=アンソニー:神無と同じ小隊に所属する新米軍医。
・秋風 紫鶴:階級は大佐。教官の中では事実上一番偉い、第九班の班長。
キャラクターデザイン:アイレ様
次の更新はプリ画像でこのお話が更新し終わるまでありません。
では、また次回。