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RAUHAシリーズ 第一作品目 自由の海  作者: RAUHA=VEITONEN
第一章 大海原のわずかな遠征訓練
1/5

艦内は戦場だ


これは私、斎藤神無(さいとうかんな)がインターナショナル=フォースの海軍にいたときのお話。



私は今戦艦の艦内の隅にあるちっぽけな医務室という仕事場にいる。それ以外、私には分からない。


「暇だねぇ……」


隣にいた同僚の看護兵がふとつぶやく。

インターナショナル=フォース士官学校の学生や4月に入った新人達を12月になって初めて戦艦に乗せ、遠征として1週間ほど航海に出る。

その救護係に運悪くなってしまった私達第八班第五小隊のメンバーと第八班第二小隊のメンバー総勢23名は怪我人のいない狭い医務室でただただ暇をもてあます。


「仕方ないよ。」


そう返事して私は包帯やら医薬品やらがごちゃごちゃ混ざりあう救急箱の中身をあさりだした。

「あっ、またやってる~」

さっきまで医務室のベッドで堂々寝ていた軍医の青年になぜか笑われた。


医務室にはベッドで堂々寝ている奴の迷惑極まりないいびき

静かにババ抜きをする看護兵達の途切れ途切れの会話

救急箱をあさる音

しかしない比較的静かな時が流れた。



時計の長針が一周くらいしただろうか。沈黙の続く医務室のドアを力強く開けたイレギュラーが現れた。


「皆お疲れ~」


私の上司にあたる小隊長が顔を真っ赤にし千鳥足ながら元気すぎる声で入ってきたのだ。


「ニック小隊長!また隠れてお酒飲んだんですか!?艦内にいるときは禁酒するって言いましたよね?まったく………少しはお酒控えてください。本当に早死にしますよ?」


「えぇ~ちょっとくらい良いじゃ~ん」


呆れた……


べろべろになるまで皆に内緒で酒を飲み今ここでだらだらしている金髪のイレギュラーなおじさんは紛れもなく軍医として名高い、ニック=バーンなのだ。


「いけません!!」


ピシャリと言い放った。本当なら彼が着ているセーラー服の襟を掴んでぶん殴ってやりたいが我慢した。ニック小隊長のアルコール依存は私達の手に負える範囲をこしている。


「アラン軍医に頼んで禁酒令出そうかしら……」


私はわざと聞こえる声でつぶやいて救急箱をもとの棚に戻し医務室から去った。


急に尿意を感じ急いでトイレに向かうと初日からトイレ前は戦場とかしていた。


「おい、早くしろよぉ~!!」

「集合に間に合わなかったら教官に怒られるじゃない!!」


艦内に二つしかないトイレの前は士官学校生も教官も軍医も看護兵もかげで戦艦を操縦する者も関係ない。ただ自分のお腹をスッキリさせるためだけに必死になってヤジをとばしまくる滑稽な争いがいつも起きているのだ。


集合時間がギリギリに迫っているのか士官学校生や新人、教官達は諦めてトボトボ戻っていく。おかげですんなりと私はようをたす事に成功し、人一人やっと通れるくらいの廊下をスリリングに通りすぎていく。


しばらく行くと食堂の近くから香ばしいスパイスのような懐かしいあの匂いを鼻が感じ取った。


「ん?今日、カレーの日かぁ………」


週に一度のお楽しみ、今日はカレーの日であることに私の胸は踊った。それは他の者も同じである。


「ヤッホー!!今日の飯、カレーだってよ!」


「マジで!?早くしねぇと。」


艦内での訓練を終えいかにも腹ペコ状態な士官学校生数名が嬉しそうに食堂へ駆けていく。


その光景に微笑みながらその場を立ち去ろうとすると、「痛っ!」という叫び声が耳に響きわたった。反射的に私は数々のトラップをスリリングにかわし彼らのもとに駆け寄ると膝を抱えこむさっきの士官学校生と心配そうに見守る仲間の姿があった。


「大丈夫?医務室から絆創膏持ってこようか……?」


声をかけてみると士官学校生は「これくらい平気です。御心配おかけしました。」とだけ言ってまた仲間と共に風のごとく走っていった。


遅れて私も同僚の看護兵と食堂に向かいカレーの中にスプーンを突っ込んだ。久し振りに食べたカレーは訓練を終えクタクタに疲れた士官学校生や新人、かげで戦艦の操縦する第十班の兵士、暇すぎて一日中ボーッとしていた看護兵や軍医、人一倍声を張り上げ士官学校生や新人の指導にあたった教官達の胃袋を幸せにした。


この時ばかりは艦内のあちこちで起こる滑稽な争いも休戦状態となった。


閲覧ありがとうございます。


今年の2月に連載した「RAUHA」が全3作品のシリーズものとして帰ってきました。


第1作品目は海軍のお話。冒頭からオチが察せるようなものですが、最後まで読んでいただけると光栄です。

ちなみにプリ画像という、アプリ,サイトにて創作企画やってます。一部の登場人物は企画で他の方から許可をいただき登場させてます。そちらも良ければ御覧ください。


なお、更新はプリ画像での企画に合わせて行うため、不定期更新となります。


<今回登場した人物紹介>


斎藤(さいとう) 神無(かんな):20歳女性。本作主人公の看護兵。階級は少尉。


・ニック=バーン:35歳男性。階級は大尉。軍医としては名高いがアルコールに依存する癖がある。


・アラン軍医:詳細は話を読む限り不明


キャラクターデザイン:空様


・士官学校生:とにかく腹ペコ。


・同僚の看護兵:詳細不明


ではまた次回御会いしましょう。


6/9追記:同じ文を二回繰り返すというバグが発生したので修正しました。申し訳ありませんでした。

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