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仮面舞踏会 三 / エピローグ

休憩室に入ると、大広間での喧騒が嘘のように遠ざかり、静かになった。


「ニナ。改めて君に求婚しよう。私、ヴィクトール・フランソワはニナを伴侶とし、生涯愛し抜くと神に誓おう。」


ヴィクトールはアントニーナの前に跪き、彼女の手を取り誓いの言葉を紡いだ。


その言葉を聞いた彼女が感じたのは、怒りと動揺。伴侶にするといって自分を騙そうとしたのかという怒りと、もし本気だったとしたら嬉しいかもしれない。だけど、信じていいのか、という動揺。彼は、真剣だったが。


「な、何を言ってるの!冗談はやめてよ!」


「冗談なわけがない。俺は本気だ。だから、一緒に王宮に帰ろう。」


「嫌よ!私は騙されないわ!」


アントニーナは、もはや復讐などどうでも良くなっていた。口では強気なものの、内心かなり動揺していた。彼は本気なのか、遊びなのか。異性との交際経験がないアントニーナにはわからなかった。遊び慣れてる人ならばとうに割り切って付き合うことが出来ただろう。


彼は遊び人で有名だ。彼女は姉のこともあり、やはりこれも遊びではないかと思わずにはいられなかった。



「ニナ、君は何か勘違いをしているようだね。確かに俺は今まで数多くの女性と関係を持ってきた。だが、本気で生涯を共にし、伴侶にしたいと思って求婚したのは君だけだ。」


ヴィクトールの目には熱がこもっていて、本気だった。それを受けたアントニーナは、僅かにたじろいだ。


「本当に…? 信じていいの?」


「ああ。」


「……私はアントニーナ・カミンスキ。ヴィクトール・フランソワの伴侶として生涯夫を支え、良き妻となるよう神に誓いましょう」


アントニーナは彼の証言に確証を得たわけではないが、なによりその目に本気度を伺えたので、結局求婚を受けてしまった。


王太子と結婚するということは、王太子妃になり、ゆくゆくは一国の王妃になるということ。実のところ彼女はそこまで深く考えていたわけじゃなかった。完全にその場の雰囲気で求婚を受けてしまったが、後悔はしなかった。

アントニーナは彼のことをちょっぴりかっこいいと思ってしまったし、彼なら自分を大切にしてくれる、と思えたからだ。





その後、二人は婚約した。家柄や血筋に問題はなく、国王も婚約に積極的だったため、婚約自体はスムーズに進んだ。

しかし、貴族たちの反発がすごかった。ヴィクトールは容姿・財産・地位ともに完璧で、令嬢たちは彼の妻の座を狙っていたし、貴族の中にも権力のため、あわよくば娘を、と思う輩は少なくなかった。彼女らは突然彼の婚約が発表され、更にその相手が伯爵令嬢だったため、納得できず、ブーイングの嵐だった。


しかしそれもすぐに止むことになる。


婚約が決まった後、婚約をお祝いしてお城で盛大なパーティーが行われることになった。同時にアントニーナのお披露目の席でもあった。彼女は、まだ社交界デビューを果たしていなかったので、彼女の姿を知っているものは少ない。

まだ見ぬ婚約者に対して皆の期待や好奇心、嫉妬が高まる中、ついに扉が開いた。


白い上品なドレスに、美しく結い上げられたストロベリーブロンドの髪。空の色のような青い瞳に、見るものを魅了してやまないその美貌。


彼女は、まごうことなき美少女であった。


他のものは声も出ない。普段は美しいと持て囃されてる令嬢たちでさえ見惚れていた。


それからは婚約に対する反対の声が上がることはなかった。


また、二人が結婚してから美しい王太子妃は国内で話題になり、彼女のスーベニアなどが飛ぶように売れた。アントニーナ人気は最高潮。彼女は、民衆からも愛された。

貴族の中でも彼女の肖像画が流行り、数多くの屋敷に飾られることとなった。


因みにアントニーナの姉の子供は、能力の高さから家臣となり、国を支えていった。


アントニーナは美貌の王妃として後世に語り継がれ、いつまでも末長く幸せに…とはいかなくても幸せに暮らしたそうだ。


☆☆☆


私が復讐の果てに掴んだものは、王妃という地位でした。






これにて終了となります。

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