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君
ぐるぐると唸る音に耳を傾けつつ縁に手をかける
ポロリと簡単に崩れ落ちてくる砂屑が目に入って痛みが走る
それでも
縁に手を伸ばしつかまって脱出しようとあがく
そんな
君を見上げる
無駄なのに
救いなんてないんだ
君が歓声をあげる
見上げても
君の姿は視界になく
意味もなく
裏切られたと思った
下を向いて唇を噛む
上から君の嬉しげな声が響く
悔しい妬ましい
なぜ君は行ってしまうのか
置いていかれたことを憎んで妬む
君の声が聞こえた
見上げると
君の笑顔と差し出される手
一緒に
登っていれば
君を信じていれば
今ここで君に呼びかければ
よかったんだろうか?
黒い影
君の後ろにある影が
君を光る物で貫いた
視界が赤と黒に染まる
ぐるぐると満足そうな音が上から聞こえる
君は笑って上へと手を伸ばす
片手は僕の手を握って
動かなくなるその瞬間まで




