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翼を広げて  作者: とにあ
自由にまばらに
53/400

絶望




手の感触が忘れられない








落ちていくあの女の顔が




嬉しげに風景を賛美する女




危険を示唆しながら










その背を押した






咄嗟に枝を握った女の顔がただ驚いて


俺を見る



見ないでくれ



お前が邪魔なんだよ



なぜ邪険にしても気がつかずにつきまとうんだよ



そばにいて欲しくないんだ



笑顔を向けるな







俺はその場から立ち去る



ああ



枝の折れる音が聞こえた




女が



俺を呼んだ気がした



振り返らずに帰った




数日後



鏡に映る女がそこにいた



甘く優しげな表情で鏡の中の俺に寄り添う



女がいた


木漏れ日と対

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