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にゃあと鳴く。
にゃあと鳴く。
そりゃ猫だからと誰かが笑う。
猫はにゃあとしか鳴かないのか?
そんなことはないがわかりやすいだろうと笑われる。
にゃあと鳴く。
手が伸びてくる。
じっとおりてくる指を見上げる。
そろりと触れる指は唐突に遠のく。
にゃあと鳴く。
撫でてほしいのかと奴が笑う。
撫でてほしいなどとは思っていない。
ただ、触りたそうにしているから大人しくしているのだ。
にゃあと鳴かず、見上げてみる。
笑いながらおりてくる手。
ゆるりと撫でられる。
にゃあと鳴く。
はっくしゅん
奴は大きな音を立ててくしゃみをする。
ズルズルと鼻をすすりながら、それでも笑って撫でてくる。
時々力加減がおかしい。
くしゅんくしゅんくしゅん
奴が鳴く。
ごめんな。
奴は笑う。
にゃあと鳴く。
別に撫でてほしいわけじゃない。




