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翼を広げて  作者: とにあ
自由にまばらに
43/400

にゃあと鳴く。

にゃあと鳴く。


そりゃ猫だからと誰かが笑う。


猫はにゃあとしか鳴かないのか?


そんなことはないがわかりやすいだろうと笑われる。


にゃあと鳴く。


手が伸びてくる。


じっとおりてくる指を見上げる。


そろりと触れる指は唐突に遠のく。


にゃあと鳴く。



撫でてほしいのかと奴が笑う。


撫でてほしいなどとは思っていない。


ただ、触りたそうにしているから大人しくしているのだ。


にゃあと鳴かず、見上げてみる。


笑いながらおりてくる手。


ゆるりと撫でられる。


にゃあと鳴く。




はっくしゅん



奴は大きな音を立ててくしゃみをする。


ズルズルと鼻をすすりながら、それでも笑って撫でてくる。


時々力加減がおかしい。


くしゅんくしゅんくしゅん


奴が鳴く。


ごめんな。


奴は笑う。


にゃあと鳴く。


別に撫でてほしいわけじゃない。



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