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寝床の冬眠熊
眠る眠る
目覚めを忘れて眠る
『仕事しろ』『交流しろ』『起きろ』
急き立てる声は聞こえない
ふっこりした寝床の中で
誰かの寝息を聞きながら眠る
人の寝息
人の温度
それは愛しい子守唄
「失われると眠れないものだなぁ」
ぐいぐいと体を伸ばしてふらふら部屋を歩き回る
部屋の隅の壷の中
春の花の塩漬けと
甘い木の実が詰まってる
大きく開いた窓からは
ひらひら舞い散る春の花
白い寝床はお日様のにおい
春の花の塩漬けを摘んで口に放り込む
誰もマナーの悪さを叱らない
「ああ、しょっぱいなぁ」
熊
眠り
春




