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休息地の牡鹿
白い木の森で白いきのこを踏みつぶす
天敵のいない死の森
白い木は柔らかく微光を放つ
生命が終わる終末
安らかに眠れるよう寄り添う
生命なき森の中
草や小枝を踏んで歩く
死をおくる役割を担うのに
自身にそれをおくることもなく
ただココにある
死を経た魂が
ここを通らなくなって髄分と過ぎた
白い我が森は魂の休息地
次に生まれなおす癒しの地
乙女のまま訪れる
束の間の旅人たち
恋物語を聞こう
恨言を聞こう
後悔を聞こう
未練を聞こう
夢見る英雄譚を聞こう
そっと首を寄せて
その髪をはもう
ああ
今なら咎める友らはいないのに
旅人はこない
鹿
死
旅路




