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泥沼の龍
さらりと落ちる髪
伸ばされる細く白い指先
泥に身を沈め
空を見上げる
伸ばされる手は
助けを求めるでなく
ただ
伸び
ありもしない陽射しを遮る
世界は静寂の泥の海
瞳を閉じ
闇に浸る
いつかいつか
世界は開くのだろうか?
周囲に音は
泥に泥が落ちるその音
そして
己が身の発する生きる音
閉じた世界で泥に身を沈め
ただいつか
かれらが戻る日を待つ
声を持たぬ彼女のために
笑いさざめくかれらが
帰り来る日を
終末を迎えた閉じた世界で
泥に身を沈め
ただ
いつかを望む
龍
沈黙
女性




