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夢を見て光欲す蛾
しなやかな肢体
するり空を見つめる瞳
彩る体毛
窓にもたれて煙管をあそぶ
弄ぶ髪の先
煙管からこぼれる煙がまとわりつく
誰もいない静寂の園
灯りを求めるように煙管をまわす
誰もいなくなった日を
記憶などしていない
自由に舞っていたことが
あったわけではない
それでも閉ざされて
今まであったものが失われた
兄妹達との連なりが
連絡の取り合えぬ切なさか
煙管をあそぶ
不安のままに空を見る
閉ざされた場所で命繋ぐ
見えはしない鎖は
昔から絡まっている
灯りの失せた世界で
重い翅を揺らす
蛾
煙管




