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霧のほとりの青いシューズ
水の流れが全てを流す
時も記憶も肉体も
なにひとつ
残るものなどありはしない
霧に包まれた水のほとり
水色のシューズ
誰も
なにも
憶えてられない
忘れてしまう
記憶は
記録は
水の中で混ざり消える
霧に包まれた水のほとり
少女のシューズが水面を滑る
「ぼくはだぁれ」
答えはなく
問いの声すら
ただ水の流れに流されていく
どこまでも
消えて
忘れて
なくなれない
水の流れが宙を舞う
ただただ
霧がひろがり
水球が
たゆり姿を消していく
すべて
すべてがおし流される
水
忘却
ぼくッ子




