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翡翠色の燕
翡翠色の燕が
なんにもない場所をゆく
翡翠色の燕は
琥珀の瞳でただ見ている
なんにもない
なんにもない
ただゼロの場所
翼を広げて飛び立てば
そこに風が生まれ
音が生まれる
翡翠色の燕は
なんにもない場所で
なんにもない心で
これから生まれるたまごを抱く
なんにもない場所で
生まれるたまご
たまごは割れない
翡翠色の燕の子供は
翡翠色の燕の知らない場所で
琥珀の瞳に見守られて
ゼロからイチになる
ゼロを守る燕には遠い場所
翡翠色の燕は
ゼロからイチへ進みはじめた命を歌う
遠い遠い先に
ゼロに戻る日を
ただ
琥珀の瞳で見つめている
燕
翡翠色
ゼロ




