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アップルムーン
月明かりが水面を照らす。
大地をしめるは這い出した不死者ども。
僕は小舟に揺られつつ遠い大地に思いをはせる。
しゃりりと歯をあてる林檎の白い果肉。
あいつらは海水に弱いから。
蠢く姿は生きてるようで、僕は小舟の中で月を仰ぐ。
しゃくりと小気味いい歯ごたえに広がるほのかな甘さを引き立てる海水の味。
じわりと喉を潤す果汁。
僕の眼差しを受けて月が恥じるように姿を滲ませる。
しゃくり。
世界の中にまるで僕一人のようで。
世界が凍って感じられたんだ。
そう。
波の音さえ凍ってる。




