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ふりかえる
後ろからの呼び声
「……」
呼ばれた気がして振り返った。
背後には誰もおらず、ランドセルを背負い直して駆け出す。
数歩で転んだ。
右膝に石ころを巻き込み、そのまま学校へ。保健室は無人。傷を洗うだけで済ませた。
数年後の中学時代。
「……」
「なぁに?」
振り返った先に仲のいい相手はいなかった。
翌日、転んで三針右膝を縫った。
高校時代。
やっぱり呼ばれて振り返ると誰もいなかった。
数日後、酷い日焼けをした。
右膝は無事だった。
呼ばれた気がして振り返った。
誰も居なくて疲れていると思った。
次の日の夕方、車が迫ってきて転んだ。右膝を挟む形で。
ヒビが入ったらしい。ついでに足首が腫れあがり、病院に行ったらレントゲンが紛失してた。
呼ばれた気配がした。
反応しなかった。
鴉に頭を蹴られてパチンと一針とめられるハメになった。
背後からの呼び声。
それはいつ訪れるとも知れない警告。
ただの実話です




