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夜の住人
陽が落ちていく。
どろりどろりと熔け落ちるように一日が終っていく。
今日は一日満足できた?
不足を残しちゃいけないよ。
不足不満が残るとね、眠れないよ?
僕は夜の住人。
寂しいんだ。
夜の世界だって昼の世界に負けず劣らず美しく生命に踊っているけれど、あんまりおしゃべりはできない。
だからね。
寝てないコがいると声をかけたくなる。
そっと囁いて返事を引き出して。
昼の世界から夜の世界へと誘いかける。
夜の町の雑踏。
人のいない道路。
公園の植物の放つ香りは夜にこそ濃く漂う。
急ぎ足で行かないで。
立ち止まって。
白い朝日が出てきたら、僕と一緒に眠ろうよ。




