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親子丼
鶏肉をたまごでとじてご飯の上にのせる。
焼き鮭をほぐしたものにいくらを散らす。
「どっちがいいかしら?」
楽しそうなハミングまじりの問いかけ。
炊き立てのご飯があげる白い湯気。
できあがるたまごはとろとろ半熟。
白いご飯に赤く散る小さなたまご。
選ぶのが難しくて頭をねじる。
ことんと置かれた湯呑みには茶柱一本たっていて。
「あら、縁起がいいわねぇ」
早く決めてねと笑う声。
今、同じ言葉をあなたに向ける。
「どっちがいいかしら?」
あなたはあの時の私みたいに頭をねじる。
「親子丼か、海鮮か」
あなたがそんなことを言うものだから、私は楽しくなってしまう。
そっと言い返していいかしら?
「両方とも親子丼だと思うのよ?」
選びきれないあなたは曖昧に頷いて、そっと私に決意の眼差し。
「じゃあ、半分こだな。よし、それでいいな!」
私は笑いをかみ殺しお茶をあなたの前に置く。




