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手
光に手を伸ばす少年が僕の視界に居続けた。
届かない世界に手を伸ばす。
でも、届きそうになれば動きが止まるのだ。
差し伸べられる光る手をただ、触れることもせず見つめている。
あると気がついても、手を伸ばしきれないのだ。
いや、手を伸ばしても、それを掴めないのだ。
欲しくて、触れたくてたまらないのに。
こわくてたまらないのだ。
暖かな光る手は、少年の瞳には熱が高すぎて、眩し過ぎた。
きゅっと横からあらわれた光る手が少年を掴む。
それは救いか絶望か。
少年は触れる熱に焦れて瞳を閉じた。




