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翼を広げて  作者: とにあ
自由にまばらに
260/400

 光に手を伸ばす少年が僕の視界に居続けた。

 届かない世界に手を伸ばす。

 でも、届きそうになれば動きが止まるのだ。

 差し伸べられる光る手をただ、触れることもせず見つめている。

 あると気がついても、手を伸ばしきれないのだ。

 いや、手を伸ばしても、それを掴めないのだ。

 欲しくて、触れたくてたまらないのに。

 こわくてたまらないのだ。

 暖かな光る手は、少年の瞳には熱が高すぎて、眩し過ぎた。

 きゅっと横からあらわれた光る手が少年を掴む。

 それは救いか絶望か。

 少年は触れる熱に焦れて瞳を閉じた。

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