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月砂
じゃりじゃりと砂地を歩く。
パタリ両手を広げて倒れれば顔を擦る砂が痛い。
砂はさらりと落ちるのに踏めばじゃりじゃりと硬さを持つ。
いや、砂が薄いのだろう。砂の下の大地が硬いのだ。
夜の砂地は白く輝く。
くるりと天を仰ぐために身体を回す。
しゃらり砂が舞い落ちる。
月はどこまでも優しく美しい。
美しさを求めるのだ。
手を伸ばさずにはいられないのだ。
月は満ち欠けてゆく。
移ろう美しさは普遍で、常に魅せられる。
眦から伝う涙が耳に入らぬよう頭を振り身体を起こす。
さらりしゃらりと砂が舞う。
ああ。
砂地をゆく。
さちをゆく。
幸を歩む。
手を伸ばし求める。
痛い砂地かも知れない。
さらりしゃらりと舞逃げる幸かも知れない。
舞う砂は辛い?
それでも美しさを讃えよう。
美しくあれ。
強くあれ。
されど、万人に美しさを讃えられるものはない。
だからこそ
月は美しいのだ。
変わりゆく不変の美だ。
月の夜、砂の上を歩こう。
どこまでも幸いを求めて。
ああ。
月砂が鳴く。




