ウサギ
ちっさな妹はハンカチで作ったウサギが好き。
ちり紙に包んだ金平糖をハンカチで包んでウサギを作る。
あの日もウサギを持って飛び出した。
いつもみたいにお家の前で遊んでると思ったのに見つからない。
「ねぇやんがウサギをもいっこ作うよ。なんいろがええのぅ?」
ウサギみたいに飛び出してくるのを待つ。
出てこない。
おかぁを呼んで探した。
怒られてもよかった。ちぃが見つかれば。
見つかった。
どうしてすぐ追いかけんかったんやろ。
水を吸ってほつけないウサギ。
おやつの金平糖。
「お供に作ってやり。ちぃが寂しゅうないようにな」
お寺さんの言葉にちぃがさみしくないようにウサギを作る。
甘いお菓子を入れて。
金平糖十粒。
一日置いて開けると九粒。
ちぃが食べたみたいで嬉しかった。
最初は毎日作っては次の日にほついた。
しばらくすると週に一度、月に一度と伸びていった。
忘れそうになると可愛らしいハンカチを見つける。
可愛らしいお菓子を見つける。
「ちぃがよろこぶ」
包装を開けれなくてふて腐れるかも。
そう思うと楽しかった。
そしてまたウサギを作る。
「おかあさん、ウサギかわいい」
子供が喜ぶ。
二匹のウサギ。
ちぃと子供の分。
ウサギを作ってはほついた。
繰り返し。
「ばぁさん、俺、チビじゃねぇんだけど?」
それでもウサギを受け取ってくれる。
「また、来るから」
ポンと手におかれる濃紺に白い小花の散ったちりめんハンカチ。
ウサギを作る。
ねぇやん、もうじきいくけんね。
うさぎの裏側




