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遠くて
じっと見つめる。
癖のない黒髪。あまり陽にあたらない白い肌。
あまり活動的ではない体は柔らかい。
和室に敷かれた布団の上で身体を起こして微笑んで見せる。
「ごめんなさい」
見に行くはずだった映画はおれのリクエスト。
申し訳なさげに微笑むから、軽く髪を引く。
「また見に行けばいいさ。今日は読書の心境だし」
身体の弱い年上の女。
彼女が求めたから祖父はおれの意志を確認することなく婚約させた。
おれの前にあったのは将来彼女の夫として一人娘の彼女の家の役にたつこと。
別に決められたことってだけじゃなく好きだからいいかと思う。
家にいたって兄の道具として扱われるだけなのはわかってるし。
兄たちじゃなくておれが選ばれたのは彼女の好みと兄たちは完結してるから。
手に入れた自由。
たぶん誰かに話せば疑問をもたれる気はする。
それでも
兄と楽しげに話す君は楽しげで少し、チリッとくるんだ。
おれは、まだまだ君に並べない。
早く早く
君を待たせることなく
君に追いつきたいんだ。




