らぶとれじゃー
ぴかぴかに磨かれた泥団子。
愛嬌のある白い紙粘土の犬は耳が外れかけ。
青い貝殻の蝶のブローチ。縁日の指輪はガラス球が外れてしまってる。
一緒に出かけた場所で買った夜空の写真。
彼が旅先で買ってきてくれたキーホルダーやハンカチ。
私の宝物。
高校に入る前に婚約をした。
わかってない貴方はにこにこと笑ってる。
「いいの?」
と尋ねれば
「好きだよー」
と笑ってくれる。
高校から大学へと行くころに彼の母親が事故死した。
そのころから一緒にいる時間は増えた。
残された末の妹の面倒を父がみると決めたから。
優しい叔母の死は辛かった。
未来の夫の心を支えたかった。
未来の妹たちを愛したかった。
「もう、ちゃんと休んでないと駄目だろ?」
「ほら、がんばってもう一口」
「苦くても飲まなきゃ」
私が、お世話を……されていたわ。
私は貴方のLoverになれる?
貴方からもらった宝物。
貴方は捨ててしまえと怒るけれど、そんなことはできなくて。
あなたがはじめてくれた泥団子はぴかぴか。
貴方が私の背中にもたれて本を広げてる。
「読書かんそーうっぜー。面白かったでいいじゃねーか」
ふっと離れて、貴方は無防備に寝転がる。
「なんで何枚も書かなきゃいけないんだよ? それかんそーじゃなくて分析じゃん」
不満そうに言いながらにじり寄ってきて私の膝に頭をうずめる。
クセのある髪を撫でる。
しっかりしてて滅多に甘えてくれない貴方のささやかな甘えが嬉しくて。
ホントの宝物は貴方の笑顔。
貴方からもらったもの。
泥団子も手裏剣のキーホルダーも青い蝶のブローチも紙粘土のわんこも
ぜんぶ、捨てられるはずもないの。
「キリンさんの栓抜き?」
それは木彫りの栓抜きで。
「……ネコ、だよ」
貴方の表情が思い出せるすべてが私の宝物。




