かなしいひと
貴女は何よりも幸せそうに笑う。
脆弱な身体を持って生きている。
幼等部から大学まで同じ学園で過ごした。出席日数は倍ほどは違ったけれど。
中学の時に婚約者ができたと笑った。
「きっといつか、私が産まなかった子を彼は抱くの」
決まりきったことと笑う貴女は迷いがない。
そう思わせて、否定することのない相手に怒りを覚えたの。
体の弱い貴女は最初から諦めていて。
彼と別荘で過ごした。
彼と海を見に行った。
映画に博物館に美術館にプラネタリウム水族館。
貴女はとても楽しそう。
高校でも同じだった。
私はその会ったことのない婚約者が嫌い。
だって、
貴女はとても心配してる。
「他に好きな人ができてもしかたありませんわ」
自分の病弱を知る控えめさに甘える男が嫌いだった。
婚約者に紹介してもらったのは大学を卒業した翌年。
まだ結婚したと言う話を聞いてなくて、弄んでる婚約者がなお嫌いだった。
二人で出かけても一切の支払いは貴女だなんて、嫌いになる理由は沢山あった。
貴女は婚約者の好みに合わせた服装で。
体のラインのはっきりわかる明るい色の服。
青いスポーツカー。
控えめな性格のわかりにくい装いに人の誤解を煽りつつ、「彼がね」と選んだ姿を「おかしくないかしら?」と笑いながら上目遣い。
貴女を呼び捨てにする婚約者に紹介された。
貴女の友人に会うのははじめてだとその婚約者は笑った。
「高校は外部受験する気ないから、楽勝」
まだ中学生だった婚約者。
青は彼の好きな色。
財布を貴女が持っているのは小学生だった彼にはきっと普通。
背伸びして、彼女を気遣う姿は婚約者を大事にする姿。
年が上だと思ってたら逆だった。
それでも、年の差は目をつむることができても、性別はどうしようもない。
私は貴女が好き。
確定した失恋に空は青く高い。
白い雲は透けるように散っている。
何処か感傷を引きずりながら、
私は笑ってみせる。
診断メーカーお題
とにあへのお題は〔かなしいひと〕です。
〔格言、名文の引用禁止〕かつ〔「青」の描写必須〕で書いてみましょう。
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