兄弟
診断メーカーお題より
『ここは、どこだろう?』
気がついたら僕はそう考えていた。
僕は暗いそこから動けなかった。
「ああ、あった。あった。本当にいったいここはなんなんだ」
聞こえてきたのは男の声だった。
上部からうっすらと眩しい光が差し込んでくる。
「お前はやっぱりあったんだな」
逆光で彼の表情はわからない。
伸びてきた手が僕を持ち上げる。
「問題は、……なさそう、だな!」
丹念に優しく僕を体を確認した彼はにかりと笑う。
『どう、……して?』
僕の声に気にした風もなく彼の手は僕の体を彷徨う。
丁寧な動きに身を任せる。僕の意識は混乱の中。
『兄さん』
僕が子供の頃に撮影中にふいっといなくなったという兄。
『おにいちゃんのようにならないで』かあさんにそう言われ続けて僕は育った。
にいさんの写真を大事にしてたかあさんの目は僕をうつさない。僕はいなくなった兄さんの代用品。
「よし、外に行くぞ!」
『待って、兄さん』
僕の声を気にしない兄さんは僕を連れて外へと出て行く。
空は高く蒼い。
「おー。空気が気持ちいいなー。お、鳥が飛んでる」
兄さんの無邪気な声が響く。
「いつか、あいつにも見せてやりてーなぁ」
『見てるよ。僕も一緒に見てる』
十年前に消えたままの外見の兄さんは空を見ながら笑う。兄さんは片手でプルタブを開けそのまま飲み物をあおる。
ふっと香る匂い。
「ああっ! うまい!」
『兄さん、お酒飲むんなら何かおなかに入れなきゃ!』
兄さんは僕を横に置く。
「携帯落とすなんて最悪だ。おふくろたち、心配してんだろうな。あいつの六才の誕生日には帰るって、入学式の写真撮ってやるって約束したんだからな」
おかしいよ?
兄さんは帰ってこなかった。
僕の小学校以降の写真は学校行事で撮った、どうしても。のものだけだ。
中学の時、父の葬儀の時に兄がいると聞いて驚いたんだ。
かあさんの妄想じゃなくて、いたんだって。
写真のままの兄さん。
僕の声が聞こえないその様はまるで古く何かが残した記憶のフィルムを眺めてるようで切ない。
『兄さん、僕はここにいるよ?』
ねーとにあ、数年前の過去から来た写真家と無機物に憑いてる生真面目な幽霊との365分の1日の物語書いてー。 http://shindanmaker.com/151526




