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翼を広げて  作者: とにあ
自由にまばらに
198/400

メインはどっちだ!(おまえか?

BL要素あり

 拾われたのはちんまい頃。

 俺はいなくなった兄弟たちと親の帰りを待ってたと思う。

 それはそれはありふれた状況。

『人』と『それ以外』の争いは激しくなっていた。

『人』でなく、『猫人マウニー』の帰ってこない親を俺は待っていた。

 そんな夜だった。俺は急に、抱き上げられた。

「猫が落ちておるな。我がうてやろうぞ」

 反抗する力もなかったがただ驚いた。そんな記憶がうっすら残っている。

「そのような薄汚いものを抱き上げてはなりませぬ」

 当時の従者の声に若君バカギミは笑う。

「ナニ、汚れておるなら洗えばよい。病なら我が少し血に干渉してやればよい。それともなにか? できぬと愚弄するか?」

 瞬間冷えて毛が逆立った。

「おお。すまぬなぁ、怖がるでないぞ? あろうて食事にして暖かに眠ろうの」

「では、若君様、御預かりいたしますので」

 言葉と共に突き出される指先。

 あそこに渡されるのは嫌で小さく鳴いてみた。

「我が良いらしいぞ? よくわかってるではないか。我がだいて連れ帰るので、そなたは気に病むな。……ん。我は部屋に帰るのだ」

 たん。と軽い音が聞こえた。

 耳がとらえた風の音。

「見るがよい!」

 声と共に俺は前に突き出された。

「彼の地がそなたが過ごせし地だ。親御とは、血族とは会えぬであろう。そなたは我と共にあれ。もう少しおおきゅうなれば我の血族となるが良い。我のモノであれ」

 よく見えなかったが空中に差し出されていた(それも町全体を見下ろすほどの高み!)と当時若君に付き添ってた従者に後年聞いた。

 やっぱり、バカギミだと思う。

 その後はいきなり湯をかけられ苦くて臭い泡を喰わされ、今思えば何の拷問かと思うな。

 世話は途中から手際のわかった侍女に取って代わられ俺は一安心。若君はふてて、常に様子を見ていた。

 噛んでも怒らなかった。

「元気になるがよかろ」

 そう言って笑う。そしてそのままにこやかに告げたのだ。

「そなたは今宵より『レオ』と名乗るがよい! 我がそう呼べば良いか? 応えるのだぞ?」

 言い聞かせてからやたら神妙な面持ち。


「レオ」


「んなぁ?」


 誓って言おう。当時の俺はきっと、なに言ってんの?という心境で鳴いただけなんだと!

「レオ?」

 ちぅっと指が吸われる。

 ピリッと感じる痛み。

「レオ?」

 繰り返される俺の名前。

 前の名前なんか覚えてない。

 あったかどうかすら分からない。

「レオ?」

 潤んだ熱っぽい上目遣い。

 こいつは俺の成長を止めようと狙ってる。

「あんだよ」

「食ろうてよかろ?」

 味見とばかりに血を吸い上げられる。

 潤んだ瞳とせびるような声に脳の奥に痺れを感じる。

 まだ、

「だーめ」


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