メインはどっちだ!(おまえか?
BL要素あり
拾われたのはちんまい頃。
俺はいなくなった兄弟たちと親の帰りを待ってたと思う。
それはそれはありふれた状況。
『人』と『それ以外』の争いは激しくなっていた。
『人』でなく、『猫人』の帰ってこない親を俺は待っていた。
そんな夜だった。俺は急に、抱き上げられた。
「猫が落ちておるな。我が飼うてやろうぞ」
反抗する力もなかったがただ驚いた。そんな記憶がうっすら残っている。
「そのような薄汚いものを抱き上げてはなりませぬ」
当時の従者の声に若君は笑う。
「ナニ、汚れておるなら洗えばよい。病なら我が少し血に干渉してやればよい。それともなにか? できぬと愚弄するか?」
瞬間冷えて毛が逆立った。
「おお。すまぬなぁ、怖がるでないぞ? 洗うて食事にして暖かに眠ろうの」
「では、若君様、御預かりいたしますので」
言葉と共に突き出される指先。
あそこに渡されるのは嫌で小さく鳴いてみた。
「我が良いらしいぞ? よくわかってるではないか。我がだいて連れ帰るので、そなたは気に病むな。……ん。我は部屋に帰るのだ」
たん。と軽い音が聞こえた。
耳がとらえた風の音。
「見るがよい!」
声と共に俺は前に突き出された。
「彼の地がそなたが過ごせし地だ。親御とは、血族とは会えぬであろう。そなたは我と共にあれ。もう少しおおきゅうなれば我の血族となるが良い。我のモノであれ」
よく見えなかったが空中に差し出されていた(それも町全体を見下ろすほどの高み!)と当時若君に付き添ってた従者に後年聞いた。
やっぱり、バカギミだと思う。
その後はいきなり湯をかけられ苦くて臭い泡を喰わされ、今思えば何の拷問かと思うな。
世話は途中から手際のわかった侍女に取って代わられ俺は一安心。若君はふてて、常に様子を見ていた。
噛んでも怒らなかった。
「元気になるがよかろ」
そう言って笑う。そしてそのままにこやかに告げたのだ。
「そなたは今宵より『レオ』と名乗るがよい! 我がそう呼べば良いか? 応えるのだぞ?」
言い聞かせてからやたら神妙な面持ち。
「レオ」
「んなぁ?」
誓って言おう。当時の俺はきっと、なに言ってんの?という心境で鳴いただけなんだと!
「レオ?」
ちぅっと指が吸われる。
ピリッと感じる痛み。
「レオ?」
繰り返される俺の名前。
前の名前なんか覚えてない。
あったかどうかすら分からない。
「レオ?」
潤んだ熱っぽい上目遣い。
こいつは俺の成長を止めようと狙ってる。
「あんだよ」
「食ろうてよかろ?」
味見とばかりに血を吸い上げられる。
潤んだ瞳とせびるような声に脳の奥に痺れを感じる。
まだ、
「だーめ」




