人生行路6
女探偵
着ぐるみ男
「というコトがあったな」
「……それでか……」
探偵が頬杖を尽きつつ、目前の魚類に告げる。
魚類である。外見を詳しく述べるなら赤と白の斑。ヒレは優雅にふわふわと。ぷっくらと丸い胴。にゅるんと薄いシャツ(白)に包まれた腕。コミカルなミットのような手袋。と、赤いスラックスに先のとんがった靴という不思議な手足が伸びた金魚着ぐるみである。
「何かあったのかい?」
探偵は興味などなさげにPCから伸びるマウスに手を伸ばす。
「まさか、ストリートファイトを挑まれるとは思わなくてね」
「人生色々だな。私はゴメンだな」
「その割りには止めも忠告もなしかい?」
金魚の責めるような口調にピタリと探偵が動きを止めた。
一拍おいて着ぐるみを見つめる。
「他人事だからな。干渉はしない。楽しかったかね?」
告げられる興味なさげな声と言葉。
「ヒドイ」
金魚着ぐるみがせつなげにそう呟くと、探偵は少し口角をあげる。
「録画を見たが、なかなか愉快だったぞ。そして視聴率も良いので次回は是非決着をつけて欲しいとのリクエストが来ているな」
着ぐるみ金魚の表情は見えない。
ただ、地味にのたうっていた動きが止まる。
「本当に、ヒドイな。……私は稼ぎネタかい?」
「いいや、娯楽だろう?」
「どうかしたのかね?」
「なんでもないよ」
(どうして滅多に見れない笑顔をこんな機会で見せられるんだか)
「まぁ、二人ともに大きな怪我がなくて何よりだろう」




