擬装の町で2
お題系
「おねーちゃん」
自分のソファベッドから抜け出て姉の部屋をノックする。手には毛布とまくら。
「いいよ」
許可の声で部屋へと転がり込む。
「悪い、夢でも見たのかい?」
答えるコトなくおねーちゃんの横に滑り込む。
鶯色の髪の彼が朱い瞳を悲しげに揺らせて告げる別れの言葉。
薔薇の庭園を舞台にしたそんな夢。
それにあたしはどう応えたのか。
初恋の喪失が許せなくて泣いて縋ったような気がする。
はじめて、彼の瞳に告げる感情の揺らぎを見つけた。
やっと、やっとね。
「頷けたの。おねーちゃん。ありがとうって言えたの。もう、大丈夫だよって」
寂しい辛い痛い。
手放したくなんかなかった。
ずっとね、別れても離れてもずっと、縋っていたかった。
涙はこぼれる。
ツライし、心は痛い。
薔薇の庭園、囚われた王子様。
それでもようやく、掴むその手をすがるその手を離せた。
子供だった。
子供でいたかった。
「おねーちゃん。あたしね、てんちょーが好き。恋なんてできないって思ってた。でもね、てんちょーが好きなの」
「そうか」
おねーちゃんは何時も通り。
それが安心する。
すり寄って甘いソープの匂いに包まれてうっとり。
「だからね。あたしがんばっていそーろーを倒して、街一番の着ぐるみ王の座を不動にする!」
決めたの。
自分の一番を作ってちゃんと告白するって。
「応援してね。おねーちゃん」
ああ。
宣言したらスッキリした。
睡魔が気持ちいい。
「おやすみ〜」
犬の着ぐるみパジャマ姿の妹の頭を撫でながら、探偵は一つ呟く。
「どうしろと?」
着ぐるみ女は薔薇の庭園にいる夢を見た。そこには鶯色の髪と朱色の眼をした武器を携えた青年がいた。青年は口を開き『愛してた』と言った。夢から覚めると涙を流していた。 http://shindanmaker.com/470585
着ぐるみ女
女探偵




