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翼を広げて  作者: とにあ
自由にまばらに
173/400

擬装の町で2

お題系




「おねーちゃん」

 自分のソファベッドから抜け出て姉の部屋をノックする。手には毛布とまくら。

「いいよ」

 許可の声で部屋へと転がり込む。

「悪い、夢でも見たのかい?」

 答えるコトなくおねーちゃんの横に滑り込む。

 鶯色の髪の彼が朱い瞳を悲しげに揺らせて告げる別れの言葉。

 薔薇の庭園を舞台にしたそんな夢。

 それにあたしはどう応えたのか。

 初恋の喪失が許せなくて泣いて縋ったような気がする。

 はじめて、彼の瞳に告げる感情の揺らぎを見つけた。

 やっと、やっとね。

「頷けたの。おねーちゃん。ありがとうって言えたの。もう、大丈夫だよって」

 寂しい辛い痛い。

 手放したくなんかなかった。

 ずっとね、別れても離れてもずっと、縋っていたかった。

 涙はこぼれる。

 ツライし、心は痛い。

 薔薇の庭園、囚われた王子様。

 それでもようやく、掴むその手をすがるその手を離せた。

 子供だった。

 子供でいたかった。


「おねーちゃん。あたしね、てんちょーが好き。恋なんてできないって思ってた。でもね、てんちょーが好きなの」

「そうか」

 おねーちゃんは何時も通り。

 それが安心する。

 すり寄って甘いソープの匂いに包まれてうっとり。

「だからね。あたしがんばっていそーろーを倒して、街一番の着ぐるみ王の座を不動にする!」

 決めたの。

 自分の一番を作ってちゃんと告白するって。

「応援してね。おねーちゃん」


 ああ。

 宣言したらスッキリした。

 睡魔が気持ちいい。

「おやすみ〜」


 犬の着ぐるみパジャマ姿の妹の頭を撫でながら、探偵は一つ呟く。


「どうしろと?」


 着ぐるみ女は薔薇の庭園にいる夢を見た。そこには鶯色の髪と朱色の眼をした武器を携えた青年がいた。青年は口を開き『愛してた』と言った。夢から覚めると涙を流していた。 http://shindanmaker.com/470585

着ぐるみ女

女探偵

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