幻惑の町であいしてる
「だーかーらー、そこはそっちをクリックじゃなくて右の画像をクリックだって」
断定される言葉にいらだつ。
言われるまでもなく知っている。
すぐ後ろから人を馬鹿にした不満の声。
「うるさい!」
私はPCの前から勢いをつけて立ち上がる。
「アレ、どこ行くの?」
気安い軽い声が追いかけてくる。
「飲みに行ってくる。おとなしく留守番してろ。未成年」
「ええ。家飲みでいいじゃん。お酌するよ?」
「カクテルがいいんだよ」
そう言って家を後にする。
あいつはちゃんと留守番してる。用があれば来るが。
仕事中に偶然開けたドア。無用心なそこは閑散とした料理店。
まだ若そうな男が料理人兼店長だった。
それが名もない料理店との出会い。
客がいない店は居心地よく、店長も何も聞いてこないのがまた良かった。
同居してる未成年。
あいつとは長い付き合い。
ずっと一緒だ。
これまでもこれからも。
「家庭を作るぞ」
そう言ってたあいつとの家庭。
当初の予定から外れたが、あいつとの家庭は築いている。
きっとあいつは気がついてない。
ならずっと気がつかないでくれ。
店長が浮かれていたからつつけば惚れた女のことをぽろぽろこぼす。
初々しすぎるその様に甘切ない気分になる。
叶わないと切り捨てるような姿がうとましかった。
誰に、咎められるわけでもないのだ。
好きな想いを譲る必要はない。
答えなど簡単にあげない。
焦れて悩み、不安になればいい。
注文したチーズとカクテルの代金を支払う。
年の離れた弟くらい。息子というには年齢が近すぎる。
いじめた時間は自分に返る。
「好きなんかで終われはしない。他など求められないほどに愛してるんだ」
「俺も、愛してるよ」
あいつの声が脳を震わせる。
「留守番、してたんじゃないのか?」
「そばにいたいし」
甘えた声。
「だめ?」
すがる声に口角が上がる。
「夕食の買い物をして帰ろう」
「え? ちゃんと食べてねーの? ダメじゃん。しっかたねーなぁ」
楽しそうな声が響く。
アレがいい、これがイイ、アレは嫌い。
「愛してる」
「ああ。俺も愛してるよ」
ひとつ年上のあなたの年を越えた。
時を止めたあなたは同じ食卓を囲みつつも何も減らさない。
私のお皿の上だけが無くなっていく。
あなたは気がつかない。
私だけを見てくれる。
あなたを感じる夜のこの時間。
その時間だけが私の幸せな時間。
「逃げたってさ、逃がさない。どこまでだって追いかけて捕まえるから。あきらめて捕まってて」
朗らかに笑う貴方。
ねぇ、捕らえられたのは私?
囚われたのはあなた?
ねーとにあ、しんだことに気づいていないオペレーターといい年して捩じくれた根性の大人が泣けるほど愛し愛される話書いてー。 http://shindanmaker.com/151526
ネジクレ眼鏡女史と幽霊オペレーター
とにあへのお題は〔どこまでだって、追いかける〕です。
〔推定表現(~らしい、~ようだ)禁止〕かつ〔食事描写必須〕で書いてみましょう。
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