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絡む糸
手に絡む糸を見つめる。
この糸は『好き』と言ってくれる大切な人からの贈り物。
『他を見ないで』『君だけだ』
甘い言葉。
心地よさに酔う。
それに影があることを見ようとは思わなかった。
抱きしめられて囁かれる甘い言葉。
絡む糸。
『必要なんだ』
そう囁かれて喜ぶ。
だからそれを正しいこととして受け入れた。
誰も何も言わなくて。
それでいいと思った。
糸に絡まれていく。
『友達な』
そう言った奴がいた。
その言葉はふつりと糸をほつけさせる。
糸を解きに来るのは一人ではなかったけれど、気がつくとみんな離れていた。
『どこにもいかずそばにいなきゃダメだよ』
寂しがっているとそう言われ、抱きしめられる。
糸が絡みつく。
『他を見ちゃ嫌だよ』
そしてその言葉にただ頷くしか知らなかった。




