丘
丘の上には立ち枯れた巨木
大きな石碑が安置されている
書かれてある言葉は風化してもう読めない
丘の下には三つの村がある
真ん中にある丘は
『石碑の丘』
『古木の丘』
『願いの丘』
三つの村の村人はそれぞれに呼ぶ。
丘をなんと呼ぶかでどの村の出かわかるのだ
子供たちが季節一巡りに三度訪れる
今回は石碑の丘と呼ぶ村からの少年少女
「僕、強い兵隊さんになるの。がんばって働いてお父さんとお母さんを街に呼ぶんだ」
「私は、聖地で神様にお仕えしたいの」
「ここにいるより幸せになれるよね?」
子供たちは思い思いに言葉を連ねる
僕は三つの村の子供たちの願いを聞く
僕が力を貸せるのは
一度だけ
いちどだけ
挫けそうな時に
今
君たちが呟いた願いを思い出させることだけなんだ
三つの村は貧しくて
君たちは外を目指す
「いつか、僕はこの村を、村から離れなくてもいい村にしたいよ。帰ってきたい」
そう言う君の後ろに死神が見えたんだ
ああ
どうして叶えられない願いを口にするの?
僕の力ではかなえてあげられないんだ
僕は三つの村を見守る石碑に過ぎないんだ
叶えられる願いは
君が望んだ過去を君の想いの強さを
忘れてしまって
折れそうな君に囁くことしかできないんだ




