119/400
天邪鬼
つい、あたってしまうんだ。
言いたい事があるのにうまく伝えられねぇんだ。
「君が好きだ」
忘れられなくなっていたんだ。
目を放すことができなかったんだ。
「ぁ……。わたしも好き、ですっ。うれしぃ」
瞬間反応できなかった。
横で君が、祝福をその子にかけるのを見ていたんだ。
なんだ。
なんとも思われてねーんだ。
悔しかった。
でも、君の前で彼女を泣かす気にはなれなくて。
君が彼女を大切にしていたのを見ているから。
彼女とのデートに君はいつも一緒で。
彼女と時間をとりたいのか、この時間を手放したくないのかがわからなくなる。
君の前で彼女を泣かしたくはなくて。
好きなのは君じゃないんだ。なんて告げたらこの子は泣いちまうだろう?
彼女を泣かせば君と距離ができるのが見えている。
ヘタレな自分が悔しくて虚勢を張る。
君のまなざしがきつくなっていく。
知ってるさ。
それでも、君の近くにいられるのが嬉しいんだ。
口をついて出るのが思ってる言葉じゃなくても。
俺が好きなのは……




