揺らぐ天秤
こぼれる涙。
確かに彼は少し乱暴。
あなたはそんな彼が好き。
反対したいあなたの家族の気持ちも本当はわかるの。
でも、あなたの理解者で在りたい私はあなたの恋を応援してる。
「どうして……」
反対される理由があなたにはわからない。
潤んだ被害者の眼差しで私に問いかけるように見つめてくる。
それとも無自覚にしたたかなあなたの逃げ方?
「何言ったんだよ」
あなたは彼女が大事。
彼女だけが大事。
間違っちゃいないけど、周りも見なきゃ。
「女を力づくってサイテーね」
苛立つ眼差しであなたは私を睨む。
コレでも私、あなたの味方でもあるんだけど?
壁にぶつけた背中、あざにならなきゃいいけど。
あなたは吐き捨てるように横を向く。
わかってる。
あなたにとっての私は邪魔者。
きっと最大の障害だとか思ってるんだわ。
私は泣いたりしない。
「そんなだから、あの子の家族に疎まれるのよ」
「おまえが何か吹き込んでるんじゃないのかよ」
「失礼ね」
ああ、そんなに暇じゃないわ。
「あなたが、不釣合いな素行だから嫌われるのよ。筋を通して他も見てみるといいんだわ」
「あのね。あの人のコト、好きじゃないわよね?」
かわいらしく首を傾げるあなたが私の袖を引く。
「なに言ってるの? 応援してるし、彼が好きなのはあなたでしょ?」
友人を私はなだめる。
でも、
すこーし、イラついても許してくれる?
あなたの手を払ったりしないわ。
私があの人を好きだなんてどうして思いついたの?
「でも」
戸惑うようにうつむくあなた。
ねぇ、笑って。
幸せでいて。
私は彼好みの女のように振舞うなんてできない。
私は、あなたを傷つけるようなまねはしたくない。
だって、私が好きなのは……




