三角関係
「君が好きだ」
あなたの声に顔を上げる。
「ぁ……。わたしも好き、ですっ。うれしぃ」
そう答えたのはちょうど私のそばにいた友人。
ぎゅっと彼女の手がわたしの袖を握る。逃げるなというように。
彼女は無自覚にしたたか。
ずっと彼が好きだった。
がんばって彼好みの女を演じる。
それはもう見てるとこでも見られていない場所でも区別なく。
じゃあ応援するしかなかった。
俯き加減で瞳を潤ませる彼女に『よかったね』『おめでとう』と言葉をかける。
あなたの『空気読んでどっか行けよ』という視線は見えない。気がつかないふりをするの。
それからあなたは私の友人と付き合い始めた。
「なんで、二人のデートにお前がついてくるんだよ」
あなたの不満そうな言葉に本当は胸がいたい。
「年頃の令嬢が異性と二人っきりで歩いてるだなんて醜聞を広められたら問題だからよ。彼女が好きなら、本気でなければダメよ? 遊び相手だなんて許されないの」
世の中世間体というものがあるのだ。
友人は由緒ある家の令嬢だった。
家族以外の男性と二人っきりで付き添いナシなんてありえないくらいの。
本当なら付き添い専用の少々年配のおば様がついてくるのだが、そこは彼女が拒否をしたのだ。
「せっかくのデート」だからと。
おかげで私が付き添っている。
幼馴染で親しく、かつ、相手の男が私に乗り換える程度の男なら付き合いを潰す判断材料にするつもりだ。
わかっている。
知っていて私はそれを受け入れる。
あなたは私の袖をそっと握る。
だいじょうぶ
そばにいるわ




