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あめおんな
「死にたいの」
少女は静かに降る雨の中そう言ってくるりと回る。
少女の長い髪がべとりと服に肌にまとわり張り付く。
まとわりつくワンピース。
濡れそぼりみっともない。
「死にたいの。殺してくれる?」
少女は誰ともなく手を天に伸ばす。
掌に打ちつけ腕を伝い滴り落ちる。
天を仰ぐ少女の表情はけぶる雨と張り付く髪で見えはしない。
腕を下ろし、俯いて諦めたようなため息。
濡れたまま、水たまりの中に進んでいく。
水たまりには水の波紋が広がり降る雨を映している。
「雨。雨。甘い雨。ねぇ、死なせて」
少女は赤い雨を浴びながら水たまりの中沈んでいく。
少女の歌声がかすれ消えた後。
雨はやみ、陽がさす。
赤い雨の名残は残らない




