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装着 Ⅵ

自分で自分のことを語る。

なにを語れば正解か。なにを語れば殺されるのだろうか。

考えを巡らせていれば、ふと気付いた。



「俺は、なにを語ればいい」


初老の男は微かに目を吊り上げ、エイジは「ふざけんな!」と喚いた。

コウは、カケルがなにを言いだすのか不安でたまらないようだった。


「俺は、自分の過去を持っていない。ただ知っているのは、両親と友を殺したことだけ。それ以外のことは、あまり思い出せない。というより、思い出したくない」


殺した、という言葉に一瞬空気が冷えた。エイジでさえ喚くのをやめた。


「ここに至るまでの過程を聞きたいのか、それともここに来た理由を聞きたいのか、俺には分からない。質問には答える。だが自分から話せる自分のことなんてほとんどない」


「…わかった。では私から質問するとしよう」


そう言ったのは初老の男。


「私はガロだ。---まず、君は何だ」


普通なら返答に困るであろう問い。

しかし、自分はこの答えを持っている。


「―――俺は、ヴォンフだ」


部屋の人間は皆息を呑んだ。

しかし先ほどの冷えた空気とは違い、今度は熱く、一瞬で沸騰したような気がした。


「てめぇ!やっぱり俺たちを殺しに!」


がたん、と音をたて立ち上がったのはエイジだけではなかった。


「!!――トーガ!」


眼光の鋭い、トーガと呼ばれた男は、倒れた椅子もそのままにカケルに歩み寄ると、いきなり胸ぐらをつかんだ。

髪の長い女は止めようと男に呼び掛けたが、椅子の上のレイヴンとシャリは、どこか訳知り顔で視線をを投げかけているだけだった。

その間カケルは抵抗することなく、吊りあがったその目をただ見つめていた。


「トーガ、やめろ、放してくれ」


そう言ってコウはカケルの胸元にある手を引き剥がそうとした。

しかし、トーガは頑として動かそうとせず、カケルに向けていたその目を今度はコウに向けた。



「コウ、お前こいつがヴォンフだってこと知ってたのか?」

「…あぁ」


コウはバツの悪そうな顔でうなずいた。


「…どういうことだよ!お前ヴォンフがどんなものか知ってるだろ!?所詮…所詮殺しの道具なんだよ!こいつだって、俺たちを排除したいあいつらが送りこんできたに決まってるだろ!俺が―――」


ダン!!


遮るように放たれたその音は、確かにトーガの声を押しとどめた。

しかしトーガはその射殺せそうな視線をを弱めることもせず、それを音の元であるガロに向けた。


「ガロさん!分かってるだろ!?こいつはここで殺しとくべきだ!」


カケルの首が徐々に締め上げられていく。

それでも、抵抗はしない。

抵抗すれば、トーガだけでなく、他の全員の殺気に当てられることになるだけだから。


「もういい」


その静かな声で、部屋の喧騒に終止符がうたれた。


「トーガ。お前は外で頭を冷やしてきなさい。今のこの場は私情をはさむべきところではない」


ガロは静かな、しかし有無を言わせぬ声色で言った。

トーガは何か言いたげにカケルとガロに視線を巡らせたが、やがてカケルを地面に放り投げて外に出て行った。


「こほっ、こほ」

「…おい、大丈夫か?」


思わず咳きこんだカケルの顔をコウが覗き込む。

その顔に浮かんでいる心配は、単に首を絞められたことだけではないと分かっていた。

トーガの過去に何かあったのは間違いないだろうが、とりあえずヴォンフということでここまで言われるのは気にくわない。

それでも今までのように深く考え込むようなことにはならなかった。

レイのおかげで慣れたのか、はたまたコウのおかげか―――

…どちらでもいいが。


「カケル。トーガはヴォンフに対しては冷静でいられない面がある。許してやってほしい」


カケルがうなずくと、ガロは品定めするような目でカケルを眺めた。


「して、ヴォンフということは笛があるはずだ。今はそれは君が持っているのか?」


隣でコウがビクリとするのが分かった。

コウが何かを言う前に、カケルは口を開いた。


「今は無い。コウが踏み潰した」

まずはこんなに遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした!

とりあえず10月には間に合った…短いですが…

前回最後に「カケルの過去」とか書きましたが、過去ないです。

ないっていうか、カケル自身がそんなに覚えていることじゃないってことなんですが。

機会があれば書こうと思います。

そして新キャラ、トーガ。

カケルのお察しの通り、過去にいろいろありました。

これについてはいつか詳しく書くことになるだろうなと思います。

そしてひとつお知らせ。

かなりのスローペースで更新している結果、最初の方と書き方が違ってきたところがあるように思えました。

よって加筆修正を行うかもしれません。その場合は日時を記します。

ですがストーリーや、新たな事実とかが追加されることはないと思うので、気にしないでください。


今回はこんなに遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

次はここまで遅くなることはないはず…

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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