《お気に入り千件登録御礼番外編》竜真とミグの出会い編
遅くなりましたが、お気に入り登録千件となりましたこと御礼申し上げます。
「見てるのが趣味?それとも斬られたい?」
気絶している女の身なりを整えた絶世にして傾国の美少女顔の男に凄まれ、その男は出てきた。
「見てるのが趣味なわけではない。途中で水を差すのも野暮だと声がかけられなかっただけだ」
現れたのは竜真より最低でも三十センチは大きい男だった。灰色の髪は肩胛骨あたりまで伸びていて一つに括られている。筋骨隆々といった体系ではないものの、体が小さい竜真にしてはイラッとするでかさだ。
マリシュテンと大人の一戦を交え、その前にぼろぼろにされた上衣を着直しながら竜真は長身の男から目を離さない。この神殿にたどり着けるなら最低でもA以上の腕前だ。数字持ちなら安心できるのだが、Aランクなら信用できない。
「こんな色合いだけど、僕は人型じゃないから安心していい。僕はリウマだ。冒険者なら一度は聞いたことがあるだろ」
気持ち良すぎて失神中のマリシュテンを竜真は抱き上げると祭壇の上にある椅子へと座らせ、大きな男と対峙した。
男は竜真が名乗った名に動揺を隠しきれず、ただ黙って竜真の行動を見ていた。
リウマとは最近1stに上がった男だが、数字持ちになってから1stに上り詰めるまで最速記録の持ち主だ。覆面を常に身につけていて謎めいた存在だが、その実力は確かだと男は聞いている。
「で?あんたは?」
「3rdのミグです」
「リユカの追求者か」
男、ミグは自分の二つ名が即返ってきたことに驚いていた。全冒険者の一割と言えど数字はそれなりの人数が居るのだ。
「数字持ちの名前と二つ名ぐらいは頭に入ってるよ。そんなに驚くことじゃない」
当たり前のことと鼻を鳴らし竜真はミグを見据えた。そんなある種の緊迫感ある時にミグは美しい風景を初めて見たような感動を味わっていた。ミグは何かに操られるように竜真の傍に寄って……
「俺が作った服を着てください!」
そうしてミグがカバンから出したのはふりっふりに最高級のレースをふんだんに使ったドレス。もちろん女性用だ。
「……それ……ドレスだよね?」
それはそれは可愛らしい桃色のドレス。
「似合えば問題ないです」
「着なくても分かる。似合う!……でも着る気はない!着せたいなら男物を持って来い」竜真は言い逃げた。
「待って!」ミグは追い掛けようとしたのだがマリシュテンがむくりと起きる。
「あなた誰?リウマは?ってその衣装可愛いわ!」と開口一番に宣いミグが口を出す隙間なくドレスはマリシュテンにふんだくられた。
「専属にしてあげるわ。で、リウマは?」
「……ちょっと外へ」
「ふーん。呼んできてくれる?」
ミグの背中から冷や汗が出てくる目の前の女からは底知れぬ圧力を感じた。そしてミグは脱兎のごとく竜真を探しにその部屋から出たのだった。
***
「……久しぶりの女装オファーだった」と竜真は覆面を付け直し、木々の間を歩いていた。
深い森の中は薄暗く、足元を邪魔するかのように張り巡らされた木の根をまるで何もない平坦な道を歩くようにその足取りは軽い。
「久しぶりに簡単に抱き潰れない人に会えたから頑張っちゃった。ん〜腰が軽い」
竜真はご機嫌に歩いていた。そこへ足元から細い触手が現れて竜真の足を絡め取ろうと攻撃してきた。
「エンカウントになってないよ」等と軽口を言う間に剣を引き抜き触手を切り刻む。触手の持ち主も斬られたことを認識できない程で、数秒間の沈黙の後、森の中に魔物の悲鳴がこだまする。
「うーるーさーいー」と次の瞬間にはその魔物は切り刻まれていた。ただしその魔物には高価買取部位があり、そこだけのみが無事に取り残されていた。
「サナダリブ……」
ミグが追い付いたのは竜真の剣が乱舞していた時だった。竜真の相手はサナダリブと言う植物系の魔物でランクはAの手強いものだったはずだが、竜真の動きを見ると赤子の手を捻るより容易いことの様だった。ミグから漏れだした声に竜真が振り替える。
「また覗き?」
「いえ、凄い絶叫が聞こえたから来ただけです。近場にいて良かった。女性が起きてあなたを呼んでいます」
「あーマリシュテン起きちゃったか。流石神竜タフだね」
この場にマリシュテンが居たら、竜真には言われたくないと言っただろう。ミグにしてみたら竜真が何気なく言った神竜と言う言葉に反応していた。あの女性はもしかしなくても自分が追い掛けていた古の神だったのではないのかと考え込む。それならばあの気迫も頷ける。
「えっと…ミグさん?」
「さんはいらないです」
「じゃあミグ、僕もこんな口調だから気安い言葉使いにして欲しい。ところであのドレスはどうした?」
「あの女性に」
「奪われたみたいだね。もう一つ聞きたいんだけど、リユカの追求者ならあの遺跡、神殿みたいなんだけど知ってる?」
「いえ……いや、特には……つい先日見つけた資料に神が居たとあったので」
「…………よし。調べに戻ろう」
二人は再びマリシュテンの神殿へ向かい歩きだした。
こうした出会いから真面目な歴史学者である側面がありながら竜真にとって変態の一人の称号を得ていたことをミグは知らない。変態と言っていた人物が無二の親友になったことに竜真は後に苦笑いしたのは本編での話。
ミグ……あれだけ変態って言われていたのに気が付けば親友の立ち位置に!そして出会って一年しかないのにあの仲の良さですよ!びば男の友情です。
この後も別の件でミグは出会い……なこともあるかどうか(おい!)
改めて今後も1stのリウマをよろしくお願いします。