第17話 鉱山中層──揺らぐガイダンス
中層へ降りて数歩進んだだけで、
空気がひどく重く感じられた。
湿っていて、
冷たくて、
そしてどこか、黒い気配がまとわりついている。
ミーナが眉間を押さえた。
「……なんか頭が重い……ガイダンスが……揺れてる……」
彼女の《ガイダンス》の光は、
黒い霧に触れたように不規則に揺れていた。
セシルも周囲の気配に集中する。
(気配感知……やっぱり雑音が混じってる……
この黒い空気のせいか……?)
ゲイルは壁に触れ、
魔力の流れを確かめるようにゆっくり目を細めた。
「……自然な魔力じゃない。
中層から急激に“黒い魔力”が満ちている。
誰かが撒いた痕跡だ」
ミーナが息を呑む。
「撒いた……?
じゃあ、意図的に……?」
「そうだ。
そして今もこちらを見ている。
気づかれぬよう影に潜んで、な」
セシルの胸がぞわりとした。
黒い何かが暗闇の奥から視線を向けているような……
そんな感覚が背中を撫でた。
(まさか……悪魔……?
ゲイルさんは“あの手合い”って言った……)
それ以上は考えたくなかったが、
黒い霧は明らかに自然ではなかった。
柱が続く広い空間に出たときだった。
キィィィィィィッ!!
耳を刺すような高音。
天井の影が揺れ、
黒い翼が一斉に広がった。
「影蝙蝠!」
ミーナが杖を構える。
しかし、セシルはすぐに“違い”に気づいた。
(……眼が濁ってる。
上層の影蝙蝠と違う……!)
通常の魔物は赤や黄色の眼をしている。
だがこいつらの眼は──
白く濁り、“黒い霧”が体表を覆っている。
生き物らしさがなく、
まるで“操られている影”のような不自然さ。
ミーナのライトショットが一匹を撃ち落とした瞬間、
死体は残らず 黒煙 へと変わって消えた。
(通常魔物は死体が残る……
やっぱりこいつら、悪魔の影響だ!)
その時、足元を影が走った。
「シャドウハウンド……!」
黒い犬影。
眼は真っ黒に濁り、周囲の霧が絶えず揺れている。
動きも異様に滑らかで、
まるで生き物の感情を欠いた“影の操り人形”。
セシルの気配感知がビリッと尖った。
(位置は分かるけど……反応が歪んでる……!
普通じゃない……!)
影犬が跳んだ。
セシルは踏み込み、古剣を振る。
チリッ!!
普段より鋭い音。
火花が、黒霧へ触れた瞬間──
細く長い“線”のように伸びた。
(……やっぱり……黒い魔力に当たったときだけ、
火花が強く跳ねる……!)
斬撃は影犬をあっさりと裂き、
黒煙へと変えられた。
通常魔物とは明らかに違う手応え。
“通り”が異様にいい。
(黒い魔物……相性がいいのか……?)
「セシル! 左上、もう一匹!」
ミーナの声に反応し、
古剣を振り返りざまに振る。
また火花が長く伸び、
影蝙蝠の体を光が切り裂いた。
黒煙が舞い、静寂。
ミーナが駆け寄る。
「ねぇセシル……今の火花……
黒い霧に触れた時だけ、強く見えたよ?」
「うん。
普通の魔物だと何も起きないけど……
黒い魔力のやつには……なんか、通りがよすぎるんだ」
ゲイルは斬撃跡を見ながら低く言った。
「黒い魔力──“魔の気配”が濃い相手に、
強く反応する武具やスキルは存在する。
お前のそれも……そのタイプだろう」
核心には触れない。
だが、確かな確信を含んでいる声。
(ゲイルさん……何か知ってるな……)
しかしゲイルはそれ以上語らず、
前方の暗闇へと視線を向けた。
「……この先だ。
影の“核”がいる。気を抜くな」
ミーナは杖を握りしめ、
セシルは古剣を構える。
黒い霧は、
まるで“意志”のように揺れながら――
中層深部へと彼らを誘っていた。
⭐ ◆ レベルアップ(+表示)
■ セシル:Lv7 → Lv8
【セシル・グレイフ】
HP:41 → 47(+6)
MP:19 → 20(+1)
STR:12 → 13(+1)
VIT:14 → 15(+1)
DEX:14 → 15(+1)
INT:6 → 7(+1)
MAG:5(変化なし)
RES:10 → 11(+1)
スキル:
《気配感知 Lv3》
《理外:微火(兆)※黒霧の魔物に反応》
セシルの胸の奥に
確かな“成長の実感”があった。
(……やっぱり、黒い魔力には反応が違う……
この剣とスキル……相性がいいんだ)
■ ミーナ:Lv4(据え置き)
【ミーナ】
スキル:
《ライトショット Lv2》
《ヒールタッチ Lv1》
《ガイダンス Lv2》
◆ 悪魔視点
鉱山中層の奥、黒い霧の中心では──
三体のレッサーデーモンが跪いていた。
その前に立つのは、
影だけで形を作った“人影”。
ルシファーの写し身だ。
「……黒い魔力に触れた瞬間、火花が伸びた。
理外の片鱗、か」
影はわずかに口元を緩めた。
「白銀の刃も気づいたな。
深部へ導け。
三つの影を配置して……迎えさせろ」
黒霧が揺れ、
三体の影が暗闇へと消えた。
「もっと見せてもらおう。
その“火花”の行き先を」
影は静かに消えた。
中層深部で、さらに強い影たちとの戦いが始まります。
何卒
ブックマーク&いいね
よろしくお願いします!




