第16話「鉱山上層──黒鼠の影」
カザン鉱山の入り口は、昼間でも静まりかえっていた。
冷えた空気が肌を刺し、
足元の岩くずがかすかに湿っている。
ミーナが杖を抱えながら言った。
「なんだか……空気が重いね」
「うん。慎重に進もう」
セシルは古剣を抜く。
刀身に浮かぶ赤い火花は、いつもどおり控えめな光──
ただ、その火花がほんの一瞬だけ“線”のように伸びた。
(……? いま、ちょっと長く光った……?
気のせい……かな)
ゲイルは無言で先に進み、
壁についた黒い煤を指でなぞる。
「……魔力の焼けた跡だ。
普通の魔物ではないな」
セシルの《気配感知》が震える。
温度のない黒い気配が、鉱山の奥でわずかに動いた。
ミーナの《ガイダンス》も反応する。
「セシル……右はだめ。
“危険”って出てる。左のほうが安全だよ」
ゲイルが振り返らずに言った。
「ガイダンスは“道”。
気配感知は“敵”。
両方使え。どちらか欠けたら、生き残れない」
二人はうなずき、さらに奥へ進んだ。
◆ 気配の揺れ
ガサ……。
湿った影が揺れた。
「来る……!」
セシルが構えた瞬間、
灰黒の小さな獣が飛び出した。
シャドウ・ラット。
黒い魔力がまとわりつき、
目だけが妙に濁っている。
ミーナが指を伸ばす。
「右前! 来るよ!」
セシルは反射で踏み込み、
古剣を振る。
チリッ。
一瞬、刃の赤い火花が“線”のように伸びた。
それが影鼠の体を裂き、黒い灰となって消える。
「いまの……行けた……!」
しかし次の影鼠は違った。
毛並みの黒さが深く、
まるで魔力が沈殿しているような重さを感じる。
ゲイルが言う。
「黒鼠だ。
気をつけろ」
黒鼠が飛びかかる。
セシルの斬撃がかすれ、刃が弾かれた。
(硬い……!)
黒鼠の爪が迫る。
ミーナの光弾が飛ぶが、
黒い毛に吸われるように散った。
(まずい――)
その瞬間。
古剣の赤い火花が、
いつもとは違う“強さ”で跳ねた。
チッ……!
わずかに長く、まるで細い“線”を描く光。
黒鼠の動きがほんの一瞬だけ鈍る。
「今……!!」
セシルはその隙に踏み込み、
黒鼠を一閃で斬り伏せた。
影が灰に変わり、
静けさが戻る。
ミーナが息をつきながら言った。
「ねぇ……セシル。
いまの光、ちょっと強かったよね……?」
「うん……俺もそう思った。
なんか、火花が伸びたような……」
ゲイルは斬撃跡を見つめながら短く言った。
「悪くない。
成長すれば、こういう“揺らぎ”は自然に出てくる。
焦る必要はない」
セシルは古剣を見つめる。
赤い火花は、またいつもの小さな光に戻っていた。
(……さっきのは……やっぱり、気のせいじゃない)
気配感知が再び震える。
奥に、もっと濃い気配がある。
ゲイルが歩を進めながら言った。
「この先だ。
影はまだ浅い。気を抜くな」
三人はさらに奥へと入っていった。
⭐ ◆ レベルアップ(+表示)
【セシル:Lv6 → Lv7】
【セシル・グレイフ】
HP:35 → 41(+6)
MP:18 → 19(+1)
STR:11 → 12(+1)
VIT:13 → 14(+1)
DEX:13 → 14(+1)
INT:5 → 6(+1)
MAG:5(変化なし)
RES:9 → 10(+1)
スキル:
《気配感知 Lv2 → Lv3》
《理外:微火・兆(Lv1)》
【ミーナ:Lv3 → Lv4】
【ミーナ】
HP:22 → 27(+5)
MP:29 → 33(+4)
STR:5(変化なし)
VIT:7 → 8(+1)
DEX:9 → 10(+1)
INT:15 → 17(+2)
MAG:17 → 19(+2)
RES:10 → 11(+1)
スキル:
《ライトショット Lv1 → Lv2》
《ヒールタッチ Lv1》
《ガイダンス Lv1 → Lv2》
◆ 悪魔視点
──鉱山最深部。
黒い霧が揺れ、
レッサーデーモンたちがひざまずく。
その中心に立つ“黒い影”は、
遠くの上層で光った火花に目を細めた。
「……まだ“火花”か。
だが……少しだけ伸びたな。
ほんの……かすかな線だ」
影はくつくつと笑う。
「面白い。
あれがどんな形へ進むのか……見せてもらおう」
黒霧が揺れ、
影は闇へと消えた。
(次回:鉱山中層へ──)
ミーナも順調にレベルアップし、
三人は少しずつ噛み合い始めています。
続きが楽しみな方は、
ブックマーク登録 & いいね
よろしくお願いします!




