表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無加護ですが、成長上限がありません 〜世界を逸脱した少年〜  作者: ジーコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/18

第13話 鉱山都市カザン

石畳の街道を進むほど、人と荷車が増えていった。


鉄の焼ける匂い、薬草の香り、喧騒──

村では感じられなかった刺激的な空気が押し寄せてくる。


「ねぇセシル……あれ、絶対街だよ!」


ミーナが指差した先には、

巨大な石壁と塔屋根が連なる壮大な景色。


セシルも思わず声をあげた。


「すげぇ……!!

 全部……建物なのか……!」


ゲイルが静かに言う。


「あれが鉱山都市カザンだ。

 鉄と魔石の街。人も多い。迷うなよ」


門の前には長い行列。

商人、兵士、冒険者、旅人がひしめいている。


ブルノ・バザルが馬車を止め、豪快に笑った。


「お前さんたち、ここまでの護衛ありがとな!

 この先は俺の庭みたいなもんだ!」


門番に「護衛同行だ」と書類を見せ、

三人はそのまま門を通過できた。


――そして入った瞬間。


「わぁ……!!」


ミーナが思わず声を上げた。


鍛冶屋、屋台、雑貨商、酒場、武具屋……

どこを見ても人、人、人。


セシルも圧倒される。


(これが……街……本物の街……)


ゲイルは大通りの先を指した。


「まずは冒険者ギルドに向かう。

 登録しておけば行動の幅が広がる」


「うん!」


三人はブルノと一度別れ、

街の中央へ向かった。


◆ 冒険者ギルド・カザン支部


中心部にそびえる石造りの重厚な建物。

大きな盾の紋章が掲げられている。


中へ入ると、

依頼掲示板いっぱいの紙、

酒場スペースの笑い声、

武具のぶつかる金属音。


まさに「冒険者の巣窟」。


受付に向かうと、

茶髪の女性職員が笑顔で迎えた。


「ようこそカザン支部へ!

 今日は登録かな?」


「はい! セシル・グレイフです!」


「ミーナ・エルドです!」


受付嬢が説明を始める。


「はい、では手をこちらの水晶へ──

 あっ、その前に保証人の方は……」


ゲイルが前へ進む。


「俺が保証人だ」


受付嬢が驚いたように見上げる。


「そ、そちら様が……?

 失礼ですが、ギルドカードをご提示いただけますか?」


ゲイルは懐から、

古びた黒革のケースに収められた一枚のカードを取り出した。


静かに受付台へ置く。


受付嬢がカードに触れた瞬間、

その表情が固まる。


「……え?

 Bランク……!?

 “剣聖ゲイル・ロウ”……って、あの……?」


周囲の冒険者たちが一斉に振り向いた。


(やっぱり……とんでもない人だったんだ……)


ミーナが小声でつぶやくと、

ゲイルは肩をすくめた。


「引退後に登録しただけだ。本気でやっていない」


受付嬢が半ば引きつりながら微笑む。


「い、いえ……す、すぐに手続きいたします……!」


受付嬢は、

ゲイルが提示した“黒革のカードケース”から取り出された

金色縁のギルドカード(Bランク) を震える指で確認していた。


「……間違いありません。

 本物のBランクカード……。

 確認いたしました」


ギルド内のざわめきがさらに広がる。


(Bランクって……村では想像できなかった強さだよな……)


セシルが驚いていると、

受付嬢はすぐに態度を正し、言った。


「では、セシルさんとミーナさん。

 登録を始めますね。

 左手をこの水晶に乗せてください」


セシルが水晶に手を置く。


ぼんやりと水晶が青く光り、

ウィンドウが立ち上がった。


ミーナも同じように手を置き、

光がふわりと淡緑に変わる。


受付嬢が笑顔で告げる。


「はい、登録完了です!

 こちらが、あなたのギルドカードになります」


差し出されたのは

薄い銀灰色の板カード。


片面に名前とランク、番号、加護欄。

裏面には、魔力を込めれば光る認証魔法が刻まれている。


■ セシルのギルドカード


名前:セシル・グレイフ


ランク:E


冒険者番号:89112


加護:なし


年齢:12


備考:要観察(ギルド内部評価)


■ ミーナのギルドカード


名前:ミーナ・エルド


ランク:E


冒険者番号:89113


加護:導きA


年齢:12


備考:加護Aランク(希少)


受付嬢が注意事項を説明する。


「ギルドカードは 本人が常に所持してください。

 なくすと再発行はできますが、

 冒険者としての信用が落ちてしまいます」


「わかりました!」


ミーナは大切そうに胸にカードを抱えた。


セシルもカードを光にかざす。


(とうとう……冒険者になったんだ……!)


胸が熱くなるのを感じた。


周囲の冒険者たちが二人を見ながらヒソヒソ話す。


「ガキじゃねぇか……」

「でも保証人があのゲイルだろ……?」

「なら素質は本物だな……」


ゲイルは気にせず一言。


「気にするな。強くなれば黙る」


セシルは思わず笑った。


ミーナも頬を染めながらカードを指で撫でている。


「私たち……本当に冒険者になっちゃったね……」


「うん。なんか変な感じだよな」


二人がカードを見つめていると──


ギルドの入口が勢いよく開いた。


「おおっ、いたいた! セシル! ミーナ!」


息を切らせながら走ってきたのは、


ブルノ・バザル だった。


「お疲れさまです、ブルノさん!」


受付嬢が声をかける。


「ブルノさん、今日は珍しく早いですね」


ブルノは書類を握りしめたまま、

セシルたちに大きな笑顔を向けた。


「さっき荷を下ろしてきたところでな!

 お前さんたちに正式に頼みてぇ依頼があるんだ!」


(正式に……!?)


セシルとミーナは顔を見合わせた。


ゲイルが無言で腕を組み、

ブルノに向かって顎を動かす。


「内容を言え」


ブルノは受付台へ書類を置き、言った。


「カザン鉱山の調査 だ。

 最近、“誰も正体が掴めねぇ魔物”が出ているらしくてな……

 このままじゃ採掘所がずっと閉鎖のままだ」


ミーナが息を呑む。


「ま……魔物……?」


ブルノは薄く笑って言った。


「大丈夫だ、すぐに行けとは言わねぇ。

 ギルド登録したてで危ねぇからな。

 ただ……準備ができたら頼みてぇんだ」


「準備……」


セシルが呟いた瞬間、

《気配感知》がピリ、と震えた。


(……嫌な感じ……?

 何か、鉱山で“動いてる”のか……?)


ゲイルが静かに言う。


「悪くはない依頼だ。

 いずれ向かう必要がある場所だろう」


セシルは深く頷いた。


「ブルノさん……

 俺、受けます。その依頼」


ミーナも迷いなく頷く。


「わたしも一緒に行くよ!」


ブルノは満足そうに破顔した。


「助かる!

 本当に助かる!

 お前さんたちならできると信じてる!」


ギルド内の注目が静かに集まる。


セシルはぎゅっとカードを握った。


(冒険者としての“最初の大きな一歩”だ……!)


ブルノの依頼書が受付嬢に渡されると、

ギルドの水晶柱が淡く光を放った。


受付嬢が書類を確認しながら言う。


「依頼内容──

 カザン鉱山の第一層・第二層の状況確認。

 危険度は……Cランク相当ですね」


「Cランク……?」


ミーナが小さくつぶやく。


受付嬢は微笑んで説明した。


「本来Cランク以上の冒険者じゃないと受けられない依頼です。

 でも、今回は “指名依頼”。

 そして……ゲイルさんが同行するので問題ありません」


ギルド内がざわりと揺れた。


「Eランクの新人がC相当……?」

「保証人がゲイルだから特例ってやつか……」

「すげぇな……あの子ら……」


セシルの鼓動が少し早まる。


(Cランク相当……!

 俺たち、そんな依頼に挑むんだ……)


しかし不思議と怖さはなかった。

ゲイルが隣に立っている。それだけで心強かった。


ゲイルが淡々と言う。


「焦る必要はない。

 準備をし、装備を整える。

 明日すぐに行く必要もない」


「うん……!

 ちゃんと準備して臨みたい」


ミーナも強く頷く。


ブルノは笑みを浮かべて言った。


「お前さんたちが準備できたらでいい。

 俺はギルドに連絡先を入れておくからな」


受付嬢も補足した。


「はい、準備が整ったらこちらの窓口で“依頼受理”の手続きをしてください。

 依頼書はこのままギルドで保管しておきますね」


セシルはギルドカードをぎゅっと握った。


光を受けて、

薄い銀灰色のカードがわずかに輝く。


(これで……冒険者として一歩を踏み出したんだ)


胸の奥がじんと熱くなる。


ギルドを出ると、

夕暮れの光が街全体を薄いオレンジ色に染めていた。


通りには行商人が商品を片付け、

鉱夫たちが酒場へ吸い込まれていく。


ミーナは街を見渡しながら言った。


「カザンって……ほんとににぎやかだね。

 ベルナ村とは世界が違うみたい」


「いろんな店があるし……

 必要な物も全部そろいそうだな」


ゲイルが静かに言う。


「明日以降、装備の確認と補強をする。

 魔物相手の依頼を受けるなら、それが第一だ」


セシルは素直に頷いた。


「うん! しっかり準備しないと!」


ミーナも明るく微笑む。


「私も魔法道具、何か買ってみようかな……」


三人は夕暮れの街路を歩きながら、

明日からの予定を一つずつ確認していく。


ゲイルはふと、遠くにそびえる鉱山を見た。


「……あそこに、“何か”がいる」


小さく呟いたその声は、

セシルには届かなかった。


ただ一つ。

街全体の空気が、どこか不自然に重い。


セシルは無自覚のまま、

《気配感知》が微かに揺れていることに気づいていた。


(なんだ……このざわざわする感じ……

 鉱山の方から……?)


ミーナがセシルに近づいた。


「セシル? どうしたの?」


「……いや。

 なんか、また揺れてるんだ。《気配感知》」


ミーナは心配そうに眉を寄せた。


「気をつけようね。

 街だからって、油断はできないよ」


セシルはうなずく。


「うん……」


夕暮れの風が吹き抜ける街路。


灯り始めたランタンの光が揺れ、

行商人の呼び声が少しずつ減っていく。


ミーナはギルドカードをそっと胸にしまいながら言った。


「セシル、なんだか本当に……

 新しい冒険が始まったって感じだね」


「うん。

 これから“冒険者”として生きていくんだって思うと……

 ちょっと不思議な感じだけど、ワクワクする」


ゲイルは街路の端で足を止める。


「今日のところは宿を取る。

 装備の確認は明日だ。

 鉱山へ行く前に、揃えておかねばならん物が多い」


「うん!」


「了解です!」


三人は街外れの宿へ向かってゆっくりと歩き始めた。


空にかかった煙は、

まるで鉱山から立ち昇る“運命の影”のように見えた。


セシルはふと、振り返って鉱山の方を見た。


その瞬間、

《気配感知》がかすかに震えた。


(……やっぱり。

 あそこに何かがいる……)


しかしその“何か”が、

後に世界を揺るがす存在に繋がるとは、

まだ誰も知らない。


セシルは前を向く。


「明日、ちゃんと準備して……

 絶対に役に立つ冒険者になるぞ」


ミーナが隣で笑った。


「うん。私だって負けてられないからね!」


夕暮れの街を、

三人はまっすぐ歩いていく。


鉱山の暗闇から、

悪魔の影がじっとそれを見つめているとも知らずに──。


こうして、

セシルたちの“冒険者としての本当の旅”が動き出した。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


第13話では、

・カザン到着

・ギルド登録(セシル&ミーナ)

・ゲイルがギルドカードでBランクを証明

・ブルノからの“正式な指名依頼”

と、物語の核心へ近づく大きなターニングポイントが描けました。


いよいよ次回から、

鉱山編(前半) がスタートします。


カザンの街での装備補強、

新しいアイテムとの出会い、

そして鉱山へと繋がる伏線──

セシルたちの冒険がさらに広がります!


応援が励みになるので

ブックマーク登録と いいね!

ぜひお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ