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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
二章

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42 私はただの厄介なお人好し


 召喚されてきたチャズに、早速だけど指示を出す。


「あっちで魔物に襲われている馬車があるの。ほんっとうに申し訳ないんだけど……」

「魔物を倒したらすぐ帰還する」

「話が早いっ!!」


 こちらが全部説明する前にチャズは全てを察して力強く頷いてくれた。

 しごでき~~~!! それから魔物と戦えるのが少し嬉しそうにも見える。


「ごめんね、ありがとう」

「ううん、僕の望みでもあるから。エミル、コトリ様を頼む」

「任せてっ!」


 チャズはそう言い残すと、キッと魔物に視線を向け、あっという間に駆け出した。

 は、速い……! カッコいい!


「コトリ様、ボクがいますからね! 怖くないですからね!」


 そしてプルプル震えながら言ってくれるエミルは可愛い。

 もう二人とも尊すぎて愛おしいよ……。


 こんな簡単な望みだけでいいのか。もっと私にしてあげられることはないのかと考えずにはいられないよ。


 チャズの望みは「定期的に魔物と戦いたい」というものだった。

 精霊だから身体が鈍るとかそういうことはないらしいんだけど、気分的に鈍るとのことだそう。

 よくわからないけど、なんだかストイックだよね。


 なお、執事仲間や私以外の人間と話すのは苦手だそうなので、そういう機会も出来るだけ避けたいって言っていた。人見知りっぽい。


 こちらとしてもスキルのことは隠したいので、今回のような場合はすぐに帰ってもらうことになる。

 戦わせるためだけに召喚してるって感じがして私としては申し訳なく思っちゃうんだけど、結果としてチャズにとっても助かる話ではあるのだ。


 次の町について、魔力に余裕のある日にはチャズに色々食べさせてあげよう。食事の必要はないらしいけど、執事たちも嗜好品として食べたり飲んだりはするみたいだし。

 それぞれの好みを把握しておいて、お礼もかねて振る舞えたらいいな。


 そのためには私自身がもっと稼げるようにならなきゃなんだけど。


 さて、遠目でチャズが魔物と戦っているのを見つつ、私も次の行動について考えないとね。


「エミル、私たちは少し離れたところから様子を見ておこう。それで、魔物が倒されたらケガ人がいないか見に行きたいんだけど……」


 ここでも結局、私にしてあげられることは安全確認と心配することくらい。

 それと、執事に頼ることしか出来ないのだ。


「もし、誰かが大きな怪我をしていたら、助けてあげられないかな?」

「コトリ様はお優しいのですね。もちろん、ボクはコトリ様がお望みならそうします。ですが……」


 エミルは小さく笑ってそう言うと、一度言葉を切って真剣な顔で話を続ける。


「ボクはどんな怪我も、欠損でさえ治すことが出来ます。けれど、人間の中にそれほどの魔法を使える人はあまりいません。ちょっと目立っちゃう、かも……?」

「そ、それは困るね」


 改めて聞くとエミルの治療魔法ってとんでもないんだね。死にさえしなければ治せる、みたいな。……そこまでの大怪我なんてしないに越したことはないけど。

 ただこの世界には魔物がいる。いつどんな不幸に見舞われるかわかんないのだ。今の、あの馬車の人たちのようにね!


 そうなると、エミルはまさしく救世主。でもあまり目立ちたくはない。

 けど見殺しにはもっと出来ない。となると……。


「ちょっとだけ治療魔法が得意って感じの少年レベルで治す、みたいなことは出来るかな?」

「一般的に見て、不自然でない程度の治療ってことですか?」

「あっ、そうそう」


 どんなレベルだ、って感じの頭の悪い言い方をしてしまったというのに、エミルの察し力が高い。まとめ力も高い。


 は、恥ずかしい……!

 アレクサンダーだったらこれみよがしに「コトリ様の語彙力は私の予想をいつも超えてきますねぇ!」とか言ってくるやつだ。エミルでよかった。


「出来ますよ! 大怪我の場合は、命の危険がない程度に治すようにしますね」

「複雑なことを頼んでごめんね。助かるよ」


 しかも出来るというんだから本当にすごい。主人の言いたいことを的確に理解してそれ以上のことをしてくれる。ここは執事によると思うけど。


 ……ダメダメ、ドムの顔が浮かぶのはダメ。

 別にドムが悪いってわけじゃ、ない、し……? 

 あ、あの子はあの子で良いところがあるんだよ!


 脳内で失礼なことを考えながら頭を振っていると、エミルが静かな声で質問をしてきた。


「コトリ様は、どうしてそんなにお優しいのですか? 人を助けようと思っても、動けない人はたくさんいるのに」


 優しい? 優しいのかな。そんなふうに思ったことがないからわかんないや。

 首を傾げていると、エミルはさらに言葉を続ける。


「チャズを召喚するのって、魔力を多く使いますよね? 今はまだ旅も始まったばかりで、魔力もたくさん余裕があるわけでもないのに……普通だったら一度召喚したら時間がくるまで側に置いておきたくなるものじゃないかなって」


 ああ、そういうことか。

 たしかにもったいない精神は働くよ? せっかく召喚したんだから、ギリギリまでいてほしいなって思っちゃう。


 けど時と場合によるから。今回の場合は利害が一致したっていうか。うーん。


「そう言われたらそうだよね。あはは、あんまり考えてなかった」

「えっ」

「気付いたらそうしてたから。なんだろうなぁ、もしかしたら本当に馬鹿みたいなお人好しなのかもね、私」


 優しいとは違う、ただのお人好し。これがしっくりくるかな。

 このお節介は人によってはただの迷惑になりかねないものだ。ただ私が放っておきたくないから、私の心の安寧のために助けてほしいって思うだけの、いわばエゴでしかない。


 だからこれは自己満足。けど、それによって助かると思ってくれる人がいたら嬉しいって思うよ。


「あと、人から感謝されたら嬉しいって下心もあるよ。エミルも褒められたら嬉しいでしょ?」

「ぁ……ふ、ふふっ、あははっ、そうですね!」

「えー? どうしたの急に笑い出して」

「いえ、ごめんなさい。ただコトリ様の考え方、好きだなって思って」


 なんかわからないけどエミルのなにかに刺さったようだ。楽しそうだからいっか。


 そうこうしている間に魔物が倒されたみたいだ。

 馬車の周辺にいた人たちや馬車の中から人が出てきて、チャズが逃げるようにその場を去っていくのが見える。


 よし、それなら今度は私たちが行ってみよう。

 さも、今しがた異変に気付いて駆け付けましたよ、という体で!!


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