39 雇用主として面接を行う!
体調を崩した次の日は、さすがに採集にもいかず丸一日のんびり過ごした。
これを機に、今まで召喚してきた執事たちと交流を深めてみようかと思ってね!
用がないのに呼び出すのは気が引けていたけど、これまでのみんなの反応からするに、むしろ呼んだほうが喜んでいるように見えたから。自惚れかもしれないけどさ!
「面接、ですか?」
「そう。ご主人様と執事、って言われると少し抵抗があるんだけど、雇用主と被雇用者って考えればギリギリいけると思って」
「面倒くさ……考えましたね」
「本音出てる! 隠すならもっとしっかり隠して!」
仕方ないじゃん! 人の上に立つという経験がほとんどないんだから! 小学校の時に課外学習の班長をやったくらいだよ!
まぁいい。話を戻そう。
「そうなると、私は被雇用者のことをもっと知るべきだと思ってさ。まずはこれまで召喚したことのある執事と一人一人話してみようと思って。注意点とかメモしたいし」
「はぁ……それで、何を話すのです?」
「アレクサンダーには親しい執事とそうでない執事はいる?」
「……斜め上の質問すぎて驚いています。少しお待ちくださいね」
思ったんだよね。執事って限りなく人間に近いから、馬が合う、合わないもあるんじゃないかなって。
すぐに喧嘩を売るようなこと言ったり、やたら優しかったりするアレクサンダーを最近見たからさ。
「いやぁ、ほら。執事同士でも相性の良し悪しってあるんじゃないかなって思って? 出来れば一緒に召喚されたくないとか、あるかもしれないじゃん?」
「そんな気配りまでしてくださるとは……! 私、感動いたしました!」
「大げさだなぁ……」
どちらかというと私の心の平穏のために知っておきたいんだよ。言わないけど。
もちろん執事たちのことも考えたいってのは嘘じゃないよ。本当だよ
「連携がとりやすい相手とかね。何か頼むときの参考にもなるし。あっ、もちろん言える範囲でいいよ」
「そういうことでしたらお安い御用です。そうですねぇ……相性が特別いい執事は……」
「執事は?」
「特にいませんね」
「ええ~~~~」
あてにならない答えきたー。特にないが一番困るっていうのに。
っていうか、絶対に嘘じゃん。めちゃくちゃ態度に出てたの私は見てるんだからね。
だというのにアレクサンダーはしれっと微笑んでいる。
「私は何でもそつなくこなせるオールCランクの執事ですから。良し悪しも特にないのですよ」
「ドムとはよく言い合いになってたじゃん」
「なっておりません!」
「へぇ……」
子どもみたいに頬を膨らますんじゃない、ちょっと可愛いのがムカつくな。
しかし、まだあるぞ!
「エミルには優しかったし」
「優しくありません!」
「えー? これも?」
「私が優しくするのはコトリ様だけですから! 大切に思うのもお助けしたいと思うのも、私のことを考えてほしいと願うのもコトリ様だけっ!!」
「わかったからそういうこっぱずかしいことを全力で言わないでもらえる?」
ちきしょう、頑固だな。しかも私が褒められると弱いってことを知ってるのがたち悪い。
はぁ、そういうことにしておいてあげるよ。仕方ないなぁ。
「もういいや。じゃあ最後の質問」
「質問数が少ないですね?」
「いーの! 最後の質問ね!」
どちらかというとこっちが本題だからね。
これはみんなに聞いておきたいことなのだ。
「私に望むことは?」
「……は?」
「なんでもいいよ。その望みを叶えるかどうかは別にして、望みがあるなら聞きたいの」
「……ございません」
「必ず言って。これは命令」
「ぐっ、卑怯な手を覚えましたね!?」
執事たちにとっては主人に仕えるのは当たり前って感覚なのかもしれないけど、私は一緒に旅する仲間って思っていたい。
……いや、お世話してもらってるのでどちらかというと私のほうが彼らに何かしてあげなきゃって感じるというか。
要は自己満足のために聞いておきたい。
いろいろと助けてくれるお礼に、望むことがあれば出来る限り叶えてあげたいんだよ。
だから「ございません」とか言われても困るのだ。言ってくれ。
「……さい」
「え?」
しばらくじっとアレクサンダーを見つめていると、ようやく口を開いた。
でも何言ってるのか聞こえない。聞き返すとさっきよりは大きいけどやっぱり小さな声でぼそっともう一度言ってくれた。
「これからも、私をメインとして呼び出すようにしてください……」
「……一番たくさん呼び出してほしいってこと?」
「…………」
じわじわアレクサンダーの耳が赤くなっていく。
な、なんだよぉ。なんだよ、アレクサンダー!
思わずアレクサンダーの首に腕を回し、頭を撫でまわしてやった。
「かっわいいなぁ、アレクサンダー!!」
「あっ、頭を撫でるのはおやめください、コトリ様ぁっ!」
「あはは! ……ねぇ、心配しないでよ。その望みはさ、たぶん頼まれなくても叶うと思うから」
「え……」
なんだかんだ、いつもアレクサンダーを呼んじゃうんだよね。
気心知れた、というほどたくさん一緒にいるわけじゃないけど……一緒にいてちょうどいいのだ。
気遣いもいらないし、気遣われすぎることもない。
友達のような気軽さで、家族のような遠慮のなさ。
まぁ、どこまでいっても執事と主人ではあるんだけどね。
「いつも頼りにしてるよ、アレクサンダー」
「っ! ああっ、コトリ様に頼られてこのアレクサンダー、嬉しさのあまり天にも昇りそうですっ!!」
「だから大げさだって」
たぶんさぁ、アレクサンダーがこうして大げさに反応するのもちょっと照れ隠しみたいなものなんだよね。だんだんわかってきたよ。
こうしてアレクサンダーの望みを聞いた私は、続けてバリー、チャズ、ドム、エミルの順に呼んで同じことを質問した。
みんな遠慮がちながらも素直に教えてくれて助かったな。
なお、苦手な執事は誰も答えてくれなかった。というか無頓着、に近いかな。互いに何かを思うことはない、みたいな。
思っていた以上にドライ……でもみんなエミルのことは気にしているみたいだった。やっぱり子どもだからかな?
もしかしたら、まだ召喚してない他の執事との相性があれこれあるのかもしれないしね。
あってもみんな頑なに言わない気もするけど。
それから望みについてもみんな「そんなことでいいの?」って感じのことばかりだった。
もちろん、全部叶えられることだから叶えますとも。出来る限りね!
というわけで面接はおしまい。今後は新しい執事を召喚する度にやっていこうと思う。
うん。……アレクサンダーが一番面倒臭かったな。




