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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
一章

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30/43

30 痴話喧嘩に巻き込まれました


 困ったなぁ。何が困ったって……私がちょっとエテルナに絆され始めているということだ。


 だってさ、この世界に来て初めて同年代の女の子とこうして話してるんだよ?

 執事のことがバレるリスクさえなければ普通に仲良くしてみたいって思うじゃん。ちょっとクセのある厄介な子ではあるけど。


 話し相手はほぼアレクサンダー、または他の執事でしょ?

 たまにロッテさんやショーンさんとマルコさんとも話すけど、あくまでギルド職員さんって感じだし、大人だから遠慮もある。


『恋鳥のお弁当いつも美味しそうだよねー。おかずちょーだい』

『ああっ、私の愛する卵焼きちゃんだけは勘弁して!』

『むぐむぐ、うん! 美味しい! お礼にこのお茶をあげよう』

『残り一口も入ってないじゃん、処す!』

『ぎゃー、お助けー! 明日、こっそりクッキー持ってくからぁ!』

『うむ、なら許す』


 高校生の時、友達としていたふざけたやり取りを思い出す。

 たまにケンカすることもあったけど、それでも楽しい気持ちのほうが強くてすぐ仲直りしてさ。


 あー、思い出すな。悲しくなる。

 けど、たまに思い出しておかないと忘れそうで怖くもある。


 エテルナは私にとって、友達を思い出させてくれる存在なのかもしれない。

 それがいいのか悪いのかはわかんないけど……きっと、私は友達に飢えているのだろう。それが面倒な性格でも。


「コトリはさ、どんな人がタイプ?」

「経済力がそこそこあって、気取らずにいられる一緒にいて楽な人」

「即答!? あはは、現実的ぃ」


 気付けば興味を失くしてもらおうなんて作戦は頭から吹っ飛んでいて、年頃の女の子っぽく会話を楽しんでいる自分がいた。


 悪い子じゃないってわかったし、執事の件についてだけ秘密を貫けば仲良くしていたいなって。

 我ながら意思が弱いし流されやすいと思うけど……そう思っちゃったんだもん。


「みーつーけーたー!」

「うわっ! げ。なんだ、カイトか……」


 二人で談笑している時、背後から急に男の声が聞こえて驚く。

 どうやらエテルナの知り合いみたい? 親しげに見えるけど、エテルナはちょっと嫌そう。


「お前、最近どこほっつき歩いてんのかと思ったら。まさかまた森に行って魔物追いかけてんじゃないだろうな?」

「うるさいなぁ。カイトには関係ないでしょ!」

「んだよ、その言い方! 心配して声をかけただけだろ!」

「心配してなんて頼んでませ〜ん」

「はぁぁっ!?」


 あー、なんというか。腐れ縁的なやつ、か? あるいは幼馴染みたいな。


 察しの良い私はすぐに気付いたよ。

 カイトはエテルナが好き。間違いないね!

 恋鳥センサーがピーン! って反応してるから!


「お前、いつか本当に大怪我するぞ! いい加減、女が一人で魔物追いかけるなんてみっともない真似やめろよ!」

「はぁ!? みっともないって何!? ほんっとカイトうるさい。そう思うなら私に近付かなきゃいいじゃない。みっともない女と仲がいいって思われたくないでしょ」

「んなこと言ってねーだろ! このわからずや!」

「わからずやはどっちよ!」


 痴話喧嘩、始まったな……。これ、そっとこの場を離れてもいい?


 今ならいける気がする。そーっと、そーっと……あうっ! エテルナにがっしり腕をホールドされたっ!


「とにかく! 今は友達とデート中なんだからあっち行ってよ! コトリと魔物談義するんだから!」

「えっ、する予定ないが?」

「魔物談義ぃ!? まさかこの女も同類!? おい、エテルナに変な入れ知恵すんなよっ」

「あっ、話聞かないやつ二人目だ、これ」


 なんか、すっごく揉め事の予感。やめてよ運A、この先に良いことがあったとしても仕事しないでくれる?


 おかしいな、平和なガールズトークを楽しんでいたはずなのに。

 話を聞かないあたりエテルナとこのカイトは似た者同士だね。


「それに! コトリにはドム様探しを手伝ってもらうんだから!」

「わぁ、初耳ぃ」

「ド、ドム様……?」


 あっ、それ以上はだめなんじゃない? と思うものの、エテルナの口は止まらない。


「今まで見たこともないくらいの美男子で、優しくて、銀髪で、笑顔の素敵な私の王子様……。あんなに理想的な人は初めてなんだぁ。私の運命の相手なんだから」

「お、王子様? 運命の相手ぇ!?」


 あー、暫定恋するカイトに大きなダメージ。

 ぷるぷる震えちゃってるじゃん。嫉妬か? 嫉妬だね?


「そっ、そんな都合の良い相手がいるわけないだろ!」

「いるもん! いたもん!」

「嘘だね! 妄想もそこまできたら哀れだなぁ、エテルナ。早いとこ結婚して家を継いじまえよ。け、結婚相手がいないってんなら、その、別に、お、俺が……」

「……もん」

「え? あ、痛い。ちょっと、エテルナ……」


 半分面白がって見ていたけど、雲行きが急に怪しくなってきた。

 同時にぎゅっと力を込めて腕を掴まれた痛みで脳内警報が鳴る。

 ちょ、エテルナ、意外と力が強い。そしてすっごく嫌な予感!


「ドム様、いるもん! 私、助けてもらったもん! 嘘じゃないもん!!」

「おわ、エ、エテルナ? あの、だから俺が……」

「カイトの意地悪! そこまで言うなら絶対にドム様を連れて帰るんだから。首を洗って待ってろよーっ!!」

「う、わっ、エテルナ! 急に走り出さないでよぉっ!」


 エテルナはどこかの幼女が言ってそうなことを叫び散らかすと、勢いに任せてとんでもないことを言い捨てながら私を引っ張って走り出した。

 後に残されたカイトの顔が青ざめていたように見えたけど……うん。あれはフォロー出来ない。


 カイトよ、人間素直が一番だぞ。


 今はそんなことよりも……あの、追いかけてあげるからせめて腕を離してくれないかな!? こ、こ、転ぶっ!!


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