28 興味を持たれてしまったらしい
私は今、いつものように依頼を選び、いつものように森へ出て、黙々と採集をしています。
それが終わったらまた昨日と同じように小型魔物の解体をやって、今日は少し早めに帰る予定だ。
「へぇ、採集メインで冒険者をね。せっかく有能でカッコいい執事がいるんだから、討伐依頼とか頼めばいいのに」
「そう思われますでしょう? けれどコトリ様は頑なにご自分の手で稼ぐのだと言って聞かないのですよ」
「変わったお嬢様に仕えて大変ですねぇ、アレクサンダーさん。で、も! そこがお嬢様の魅力♡なんでしょ?」
「その通りでございます! エテルナさん、よくおわかりですねぇ!」
「ちょっと黙ってくれないかな、二人とも?」
いつもと違うのはなぜかエテルナちゃんがついてきているということだ。なんでいる?
というかアレクサンダーと意気投合してんじゃないよ。会話弾んじゃってるじゃん。どうしてこうなった?
「おやおや、コトリ様。ご安心くださいませ。私はコトリ様一筋ですので」
「やだ、そういう感じ? ヤキモチ妬いちゃった感じー!?」
「え、うざ……」
アレクサンダーが二人いるとこうなる、ってのを体験している気分だよ。
なんかいつの間にか私相手だと敬語もなくなってるし。
大きなため息を吐いて採集したものを袋に詰めながら立ち上がり、私は二人を冷めた眼差しで見つめながらようやく会話に加わった。
向こうがそんな話し方ならこっちも気にしなくていいよね。
「あのさぁ、エテルナちゃんはなんでついてきたの? まだ私に何か用があるの?」
「用っていうか、興味があるんだよ。私さ、普段は魔物や植物の研究をしているんだけどね? 職業病っていうのかな、人間観察も趣味なんだ」
「え、私、観察対象にされてる……?」
予想外の角度からきたな、それは。だからそこはかとなく変人の気配を漂わせていたんだね。
失礼? 彼女のほうが失礼だから問題なし!
「だって、美青年の執事を連れて冒険者業をしてるお嬢様なんて面白いもの! それに一緒にいたらまたドム様にお会いできるかもしれないじゃない?」
「お嬢様じゃないけどね」
というか、まだドムのこと諦めてなかったんだ……?
うーん、勘が良い。たしかに私といればいつかはドムに会えるだろうからね。呼ばなきゃ出てこないけど。
と、説明するわけにもいかないので遠回しに伝えるかぁ。
「あの人とは昨日初めて会っただけだし、そんなに都合よく現れないと思うよ」
嘘は言ってない。実際、昨日初めて召喚したわけだし、エテルナちゃんに合わせるために召喚だってしないもん。
むしろ用があった場合はこっそり隠れて召喚するつもりだ。
「まーね。そのくらい私にだってわかってるよ。だからドム様だけじゃないって言ったでしょ? お嬢様に興味があるの」
「なんで? あとお嬢様じゃないからその呼び方はやめてほしい……」
「じゃあ、名前教えて? 私のことはエテルナでいいよ」
「こ、恋鳥」
「コトリね! これも何かの縁! よろしくぅ!」
なんか変な方向に話が向かってしまったな。
ま、まぁ? ややこしい揉め事に巻き込まれるわけじゃないなら、仲良くするのは吝かではない。
差し出された手を戸惑いながら掴むと、思い切りぶんぶんと振られてしまった。
「この後の予定は? まだ採集続けるの?」
「いや、この後は解体の練習なんだけど……まさかずっと一緒にいる気?」
「もっちろーん!」
「勘弁してよぉ……」
エテルナちゃん、いや、エテルナが一緒にいたらアレクサンダーにあれこれ頼めないし、そもそも時間が来た時に送還も出来ない。
何かあった時に他の執事を召喚することだって出来ないじゃん!
「帰って」
「え?」
「私はエテルナに付きまとわれたくないの。観察だって許可をした覚えはないよ。はっきり言って、迷惑!」
「そんなっ」
うっ、良心が痛む。でもハッキリ言わないと、こういうタイプはずっと付きまとってくるんだ。私は詳しいんだっ!
「コトリは私が嫌いなの!?」
「面倒臭い恋人みたいなこと言うなっ」
しまった、ついアレクサンダーに言うみたいに突っ込んでしまった。
でもエテルナは気にしていないみたいだ。強い。
「そういうことじゃなくて、急に付きまとわれるのが困るの!」
「じゃあ事前に言えばついて行ってもいい?」
「……」
「いいって言ってよぉ!」
本当に面倒な子だな。興味を持たれたのが運の尽き、か。
「わかった。事前に言ってくれたら時間を取るよ。でも依頼をこなしている時についてくるのはやめてほしい」
「本当!? やったー! じゃあ、明日! 明日の午前中に時間ちょーだい!」
「う、わかった……」
「冒険者ギルドの前で待ってるからーっ!」
エテルナはそれだけ言い残すと、とびきりの笑顔で大きく腕を振りながら町のほうへと走り去っていった。
ああ、前を見ないと転ぶよ! ……転んだ。期待を裏切らない子だ。
「ふふ、コトリ様。ようやく二人きりになれましたね」
「……昨日、アレクサンダーが帰った直後のドムも同じこと言ったよ」
「屈辱!! いまだかつてない屈辱と憤りを感じていますよ、私は! 今!!」
エテルナが去って静かになったかな、と思ったけど、アレクサンダーだけでもうるさかった。
でもこれが日常になりつつあるんだよね。ちょっと落ち着くとか思い始めてるから、私はもうだめかもしれない。
「はぁ、それにしても変わった子だったなぁ。明日時間取って話せば、もう興味をなくしてくれるかな?」
「それはコトリ様次第かと」
「私?」
「ええ。コトリ様がつまらない人なら、興味を失うでしょうし」
「それだ!」
つまり、何を聞かれてもぼーっとしていたり、ろくに話をしなければつまんないと思ってもらえるかも!
明日は一人で行くつもりだからきっとアレクサンダーのこととかも聞かれるよね。
でも全ての質問にのらりくらりと返事していればきっと私から興味を失うに違いない。
よし、今日こそは明日の対策を練ろう。たとえお風呂が気持ちよくて何も考えたくなくなってもね!




